2017-05

目次

≪ テイラー展開の世界④ ALL 運動について 2 (位置と速度) ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

運動について その1(速さとは)

物体が移動した時、その移動の速さを表すにはどうしたら良いだろうか? 一時間という時間を決めて、その間に移動した距離を測れば速さを表すことができこれを時速という。しかし人間が歩く速さと車が走る速さを比較するのに一時間もかけてどちらが速いかを決めるのはバカらしい。そこでもっと短い時間で速度を調べるのが普通だ。例えば一秒間で移動した距離を用いるほうが良いだろう、これを秒速という。車と人間の速さ比べで秒速を使うと車はエンジンが回り始める最初の数秒は人間より遅い事がわかるだろう。数秒たつと車の速さが10[m/秒]程度になり人のスピードを越えてしまうだろう。 プロ野球の投手が投げる球は秒速30m(30[m/秒]と表そう)程度である。しかし空気抵抗があるのだから投手の手から離れた瞬間が最も速く、少しずつスピードは落ちているような気がする。そうなると0.1秒でどれだけ進んでいるのかを測る方が良いだろう。このようにして速さとはある時間に進んだ距離で定義されるのだが、時間の間隔が短いほど運動の記述が正確にできそうである。この考えを突き詰めてゆくと時間間隔を無限に小さくした場合の移動距離を調べると良いのではないかと気づく。しかし時間を無限に小さくしてゼロに近づけてゆくと移動距離もゼロになるだろう。ゼロでは意味が無い。そこで時間間隔と移動距離の比を取るというアイディアにたどり着く、つまり





v(t)=LimΔt→0 [x(t+Δt)-x(t)]/Δt ≡ dx(t)/dt


これが最も細かく時間間隔をとって定義した速さを表す量であろう。物理学ではこれを瞬間の速さと呼び、通常速さといったら瞬間の速さを意味する。これと区別するために、先程までの有限の時間間隔で定義された速さは”平均の速さ"と呼ばれる。(瞬間の)速さの定義式について説明しておこう。最後の表式では時間間隔Δtを無限に小さくした量をdtと書いた。Δtが小さくなると位置の変化x(t+Δt)-x(t)もどんどん小さくなるだろう、無限小に小さくなった位置の変化をdx(t)と表し、二つの微小量の比をdx/dtと書く慣わしだ。これを数学では微分と呼ぶ。



図に青い点でt=0t=Δtでの物体の位置x(0)x(Δt)が示されている。時間と位置の差はΔt, Δx=x(Δt)-x(0)である。図を見ればΔx/Δtが二点をつなぐ線の傾きであることが分る。 つまり速さとは"時間-位置グラフ"の傾きだ。

undougaku_01_1.gif

もっと時間がたったときの位置もグラフに書き込んでみよう。図では時間間隔Δt=0.1 [s]にとって、時刻0から0.3秒後の位置までが描かれている。この図では0.1秒より細かい運動の様子は分らないが、運動の大体の様子はわかる。各点をつなぐ線の傾きは時間とともに大きくなっている。つまりこの物体の運動はどんどん速くなっているということだ。

undougaku_01_2.gif




さて瞬間の速さと、平均の速さの違いをもっとはっきり認識するために簡単な練習をしよう。次のような三つの場合を考えて平均の速さと瞬間の速さを較べてみよう。

x1(t) = 1 [m]
x2(t) = t [m]
x3(t) = t2 [m]

瞬間の速さは以下のようにして求められる。

v1(t) = Lim [x(t+Δt)-x(t)]/Δt =Lim [1 - 1]/Δt = 0 [m/s]
v2(t) = Lim [x(t+Δt)-x(t)]/Δt =Lim [(t+Δt) - t]/Δt = 1 [m/s]
v3(t) = Lim [x(t+Δt)-x(t)]/Δt =Lim [(t+Δt)2 - t2]/Δt = Lim [2tΔt+(Δt)2]/Δt= 2t [m/s]

時間間隔を1秒にとったときの平均の速さを求めよう。それは上の式でΔtを微小にする極限をとらずにΔt=1 [s] とおけばよいので

v1,平均(t) = [1 - 1]/Δt = 0 [m/s]
v2,平均(t) = [(t+Δt) - t]/Δt = 1 [m/s]
v3,平均(t) = [2tΔt+(Δt)2]/Δt = 2t+Δt = 2t + 1 [m/s]

となる。最初の例は、時刻tを変えても位置が変化しないので止まった物体に対応する。止まったものは平均の速さも瞬間の速さも同じである。2番目の例はどちらも速さv=1[m/s]で一定である。速さが一定なら瞬間の速さも平均の早さも同じだ、なんとなくそうだろうという気がする。違いは三番目の例で現れる。瞬間の速さは v=2t [m/s]である。つまり時間がたてばどんどん速くなる物体の運動だ。平均の速さは瞬間の速さと1[m/s]ずれている。速さが時間とともに変わる場合には瞬間の速さと平均の速さは異なるというわけだ。これは当然だろう。車に乗って平均の速さで100km/時で走る、一時間経つと100km先までいけるが走っている途中はカーブもあれば下り坂もある。車の中では速さが場所によって変わっている事を体感できるだろう。速さは時速80km/時の時もあれば120km/時の時だってあるわけだ。平均の速さは運動を大雑把に見たときの速さしか教えてくれないのだ。 そういったわけで物体の運動を精密に記述する物理では瞬間の速さを用いるのが普通である。



最後に瞬間の速さと平均の速さについてもう一つコメントして終わりにする。瞬間の速さは時間間隔Δtを無限に小さくした時の極限で定義された。しかしよく考えると、実際に時間間隔を無限に小さくとって物体の移動距離を測定するなんてことはできない。花畑で飛ぶ蜂の運動を調べたいとしよう。しかし蜂は常に運動している、人間の勝手な都合で止まったりはしてくれない。無限に細かい時間間隔をとって蜂の運動を調べる事ができるなんて到底無理な話だ。先程の例でいうと理想的には

v3(t) = Lim(2t + Δt)

Δt→0の極限を考えたいのだが、数学的には簡単なことでも実際には無理だ。つまり物理で考える速さというものは理想化されたもので実際に測られる速さとは異なるわけだ。しかし連続シャッター機能のついたカメラを使えばΔt=0.1秒くらいの間隔で蜂の移動距離を調べる事は可能だろう。それならば

v3,平均(t) = 2t + 0.1

であって、これは殆んど理想的な瞬間の速さ2tに近い。もっとお金をかけて高度なカメラを買えばもっと理想に近い測定ができる。そういった意味で理想化された状況で定義される瞬間の速さというものにも意味があるという事になる。つまりあまり細かい差を問題にしないのであれば


瞬間の速さ ≒ Δtを十分に小さく取った時の平均の速さ


と言う事だ。当たり前に思えるが、これは後で使うので覚えていて欲しい。

コメント

zさんへの返信

理解できとたいう感動を得ることができたようで、非常に良かったです。
その喜びがこそが、勉強することの目的ではないかという気がします。
つまり、勉強して分かった気がすると人間って幸せになりますよね。
小さな幸せですが、時折ポケットから取り出して、眺めなおし、再考し、
また喜びをえる。そしてポケットにまた大事にしまっておく。
知ることとはそんな幸せではないかと思っています。

zさんの疑問にかんして、また詳しい返信は別に書きます。
とりあえず、コメント、ありがとうございましたという返事です。

こんばんは。zです。

えー、小学生レベルからスタートして、意味はよく判らなくても、位置、速度、加速度の計算はできるようになりました^^。

数値を入れればグラフも自動で出てくる時代で、接線の角度が加速度だということが視覚的にも理解できました(という気分)。

***
改めてこちらのページを拝見しますと、大体同じような内容のことを、実に軟らかい表現をされているのが驚きでした。

他では、イマイチ理解できない部分が「極限をとる」というところで、

「どうして式を変形した最後で△t→0とするのか?」

これは時限装置なのか?
最後で0を代入(?)する決まりなのか?
等号で結ばれているのならいつでも任意の時点で「→0」にしてもいいんじゃないのか?

およそこのような?????が頭を占めていたのですが、
それが「0.1」でも「1」でも、なにも極限をとるばかりではないというのは目から鱗でした。

***
まあ、本当の理解という意味では一生できそうもありませんが^^、
レベル≒0からのスタートですので、少しの理解が自分でとても面白いです。
ありがとうございました。

のほ

「殆ど判らないのに、なんとなく面白そう」

非常に嬉しい褒め言葉です。判ってもらえると尚更良かったのですが、分からなくても面白そうというはある意味わかる以上に重要なことかなと思っています。
勉強なんてものは、興味を引き出すことができれば、あとは自ずとすすむものでしょう、なんて思っていますから。

物理以外にもついても多少記事を書いていますから、暇があれば覗いてください。

はじめまして。
とある交通事故を追っているうちに
身の程知らずに紛れ込んでしまいました。

三角関数はそのコトバだけ覚えている。
平方完成なんて、私の時代には在ったのだろうか?

そういうレベルですので、お話しさせていただくにも
有能な通訳の方でもいらっしゃいませんと駄目そうです。

にも拘らず、ほとんど判らないのに、なんとなく面白そうです。
そういうわけで、時々、こっそり拝見させていただきますので、
よろしくです。



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://letsphysics.blog17.fc2.com/tb.php/107-d4b2ab70

«  | HOME |  »

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

アトム 

アトム 

趣味   近所散策と物理

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。