2017-11

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≪ Deftech ALL 古典力学 4 (作用反作用の法則前編) ≫

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古典力学 3 (運動方程式後編)

前回運動方程式を説明した。加速度dv/dtは力Fに比例して質量mに反比例するというものだ。そこで質量かける速度を運動量と呼びp = mvという新たな量を作った。運動量を使うと第二法則は「運動量の時間変化は力によって生み出される」という事になる。

      dp/dt = F      

一様な重力下での質量mの物体の運動を考えよう。水平方向にx軸、鉛直上向きにy軸をとる。物体に働く重力は鉛直下方に- mg[N]とする。gは重力加速度定数でg=9.8 [m/s2]、また力の単位はニュートンで与えられる。運動方程式で使う力はニュートンと呼ばれるが当面は単位系のことはあまり気にせず進む。考えている座標系は下の図のようになる。

koten_riki_03_01.gif


ここで少し補足しなければならない。これまで触れてこなかったが運動方程式に現れる力Fや速度v、加速度aはベクトルと呼ばれる。これらの量は大きさと方向を持つのである。数学的にベクトルを表現するには各成分を並べて表す,例えばF = (Fx,Fy)という具合だ。Fxはx軸方向の力の大きさを表す、Fはy軸方向の力だ。 今回の例では重力は鉛直下方に働く、よって

F = (0, -mg)

である。力の強さはmg、その方向はy軸の負に向いていることを示すためにマイナス記号がついている。今の例では考える空間が2次元,xとyに限定されているためにベクトルは2つの成分で表される。一般のベクトルはx,y,zの三つの軸に対応した3成分ベクトルとなる。問題に現れるベクトルは位置r、速度vと加速度aを2成分のベクトルとして表現しておこう。


   r=(x, y),    v=(x', y'),    a=(x'', y'')     (ただし '=d/dtは時間微分を示す)


力学では時間微分が頻繁に現れるために省略記号として文字の右肩にダッシュをつけて時間微分を表すことが多い。さて速度がベクトルであるために運動量もベクトルである。運動量の定義は質量かける速度なので p=mv=m(x', y') 。運動量と力がベクトルで現されるために運動方程式は二成分微分方程式となる。運動量ベクトルの微分はdp/dt=(dpx/dt, dpy/dt)の意味である。


      dp/dt= F      
→ m(x'', y'')= (0, -mg) 
→ mx''= 0 と my''= -mg 

運動方程式はのようにベクトルとして書くのが普通だが、その意味は成分毎の微分方程式をまとめて書いたに過ぎない。どちらで表現するかは好みの問題である。



x方向の運動方程式を最初に解いてみよう。ベクトルで表された運動方程式のx成分を書き出せば

x'' = 0

となる。つまり二階微分してゼロになる関数が知りたい答えだ。私は一歩一歩進んで行くのが好きだ。二回微分方程式は一階微分方程式に変換して解いていこうと思う。先ず座標に関する二回微分は速度を使って書けばx''=vx'となる。vxに関する微分方程式は以下のようなステップで解いていける。

dvx/dt=0   → ∫dvx = 0   → vx(t)-vx,0 = 0   → vx(t)=vx,0

最初の変形では両辺にdtをかけて∫記号を付けた。次の変形はvに関する積分を時刻t=0からtまでやった、つまり∫dv=v|v(0)~v(t)=v(t)-v(0)。x方向の初速度vx(0) = vx,0と記した。この答えはまだ最終的なものではない。知りたいのは時刻tにおける位置x(t)なのだ。そこでv(t) = dx/dt であった事を使い

dx/dt=v(0)   → ∫dx = ∫vx,0 dt   → x(t)-x(0) = vx,0t   → x(t)=x0 + vx,0t

各ステップは先程と同じことをやっただけだ。これがx方向の運動方程式を解いた最終的な答えだ。



     x(t)=x0 + vx,0t     

答えを見ると実に当たり前だ。運動方程式は加速度がゼロだと教えていた、つまり時間に関する二階微分がゼロになる関数が答えだ。上の式は時間の一次関数であるからこの条件は満たされる。また二階微分方程式の解には二つの任意定数が入る、つまりx0vx,0だ。運動方程式はこれらの定数に関して何の制限も与えない、よってこれらは自由に選べる定数なのだ。物理ではこれらの定数は初期条件として与えられ、時刻t=0での位置と速度という意味を持つ(補足)。



さてy軸方向の運動方程式を解こう。上の計算が理解できていれば難しいことは何もない。運動方程式は両辺に現れる質量mを消して

y'' = -g

である。つまり重力による運動は物体の質量によらないことを意味する。先程と同じように速度y'=vyを用いて一階微分方程式に書き換える。

dvy/dt=-g   → ∫dvy = -∫gdt   → vy(t)-vy,0 = -gt   → vy(t)=vy,0-gt

x方向の運動方程式を解いた場合と全く同じようにして答えが求まる。一階微分方程式を解くと一つの任意定数vy,0が解に入ってくる。次にvy=y'を使ってyついて解くわけだが、その際に更にもう一つの任意定数が入ってくる仕組みだ。

dvy/dt=vy,0-gt   → ∫dy = ∫[vy,0-gt ] dt   → y(t)-y0 = vy,0 t-(g/2)t2   

整理すると重力による鉛直方向の運動方程式の一般解は



          y(t)=y0 + vy,0 t-(g/2)t2           

となる。重力による効果は重力加速度gを含む項に現れている、その他はx軸方向の運動と同じだ。重力は一定の加速度-gを生むのためにt2に比例している。時間で二回微分すれば定数になるためにはtの二乗に比例していなければならない。



下に(x(t),y(t))を時刻t=0での初期条件(x(0),y(0))と(vx(0), vy(0))を適当に選んで描いてみた。運動の様子が視覚的に分るのではないだろうか。

koten_riki_03_02_small.gif


詳しく分析するために、運動の様子を一定の時間間隔を区切り描き、各時刻での位置から鉛直と水平に直線を延ばした。左に描いたオレンジ球の運動は初速度をvx,0 = 0とし、y軸方向の初速速度は青い球と同じ値に選んだ。これは真上に球を投げ上げた場合の運動だ。幼い頃に石を投げ遊びをしたことがあるならこれらの運動は非常に分りやすいだろう。x軸方向には速度一定で飛び、y軸方向の速度は最高点に達するまで一定の割合で減少、落下する際には速度を徐々に増加させながら地面に到達する(y'=-gt)。真上に投げた球も斜めに角度を持って投げた球も落下するまでの時間は同じだとか、水平方向へは速度は一定で進む事など日常経験と照らし合わせてみてももっともらしい運動であろう。実際には空気抵抗があるために多少の違いはあるが理想化された空気抵抗ゼロの状況で実験をすればこの図のような運動が実現される。

koten_riki_03_03_small.gif


今回は方程式を解き運動を理解することに慣れるのが目的であった。その際初期条件として時刻t=0における位置と速度を与える必要があることを学んだ。ニュートン力学ではこれらの初期条件さえ与えれば任意の時刻における物体の位置は決まっている。初期条件によってその後の運動が全て決まっているという理論を決定論的という。極論をいえば我々の世界は宇宙の開始時間に与えられた初期条件だけで決まっており、複雑な運動方程式を解く事ができる賢者にとっては個人の意思や努力といった事など意味がない、全ては最初から予想された事だという考えだ。科学者にとっては魅力的だろうが少し恐ろしい気もする。一方で経験から自然界の運動は決定論的ではないように思われる。ニュートン以後科学者達は決定論的なニュートン力学から決定論的ではない運動、つまり初期条件だけでは決まらない運動が実現する可能性を調べた。これらの研究は近年カオスとか複雑系と呼ばれる分野へと発展した。興味のある読者は自分で調べてみるとよい、古典力学と言えど我々の知識は非常に限られていることに気づくだろう。ニュートン力学誕生から300年経った現代においても我々は3体問題の運動方程式が解けないのである。興味のある読者は「古典力学、三体問題」などで検索して面白い記事が見つかるだろう。


(補足) 力学の基礎方程式が二階微分方程式であることは、物体の運動を決定するには初期条件として二つの定数を与えなければならないことを意味している。このことは直感的に非常に分りやすい。我々は物体の落下に関して初速を与えるかどうかによってその後の運動は異なることをしっている。もちろん落とす高さによって位置が異なることも知っている。よって初期条件として運動を開始する時刻での位置と速度を与えないと運動は一意的に決まらないはずだ。つまり自然を記述するには2階微分方程式が必要だということになる。例えば一階微分方程式では任意定数は一つしかないために物体の運動を記述する初期条件の自由度が足りないという事になる。

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