2017-04

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≪ 難問その1 ALL Q001 滑車問題 ≫

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ブロッホの定理 (1)

ブロッホは周期的ポテンシャル中を運動する電子の波動関数を研究し、ブロッホの定理と呼ばれる重要な結論を導き出した。固体物理などでは結晶構造からくる周期的ポテンシャルが存在するためブロッホの研究が非常に重要な意味を持ってくる。実際ブロッホの定理は現代の量子エレクトロニクスを支える基礎となっている。

周期ポテンシャルV(r)をもったハミルトニアン



           H = p2/(2m) + V(r)     

を考える。ポテンシャルV(r)は結晶構造をもった原子が作るクーロンポテンシャルなどをイメージしておいてよい。結晶は原子が格子ベクトル ai の方向に規則正しく並んだものであるから、ポテンシャルは周期性をもつ。

V(r+ai) = V(r)

3次元の問題を考えるときは結晶は i=1, 2, 3 と3方向に周期的に並んでいる。

ブロッホは周期ポテンシャル中の電子の波動関数は結晶のもつ対称性を反映したある条件を満たさなければならないことを見出した(ブロッホの定理)。この定理は周期ポテンシャルを持つシュレディンガー方程式で成立する厳密な数学定理であり、波動関数を強く制限する。物質中のハミルトニアンは膨大な情報を含むために厳密解を得るのが不可能であり、ブロッホの定理などの波動関数を制限する定理の助けを借りなければその近似解すら得るのが困難である。

以下に量子力学のテキストで見かける簡単な証明をあげた後に具体的なモデルを解いてブロッホの定理を確かめてみる。証明のあとにそれを具体例で確認するというのは無駄な作業のようだが、定理の物理的いみと重要性を知るためにはやはり具体例が一番だろう。次にフーリエ変換の方法を用いブロッホの定理を見直すことにする。これはバンド理論へと発展してゆくのだが、ここではその入門的なことを説明するつもりだ。



一次元の話から始めよう。波動関数Ψ(r)を一辺が L の箱に入れ周期的境界条件を課す。結晶をつくる原子間の距離は各方向にa であるから結晶鎖の数は N=L/a で与えられる。周期的な境界条件は

Ψ(r+Na) = Ψ(r)  (i=1,2,3)

となる。Ψに対するシュレディンガー方程式は

[ p2/(2m) + V(r) ]Ψ(r) = E Ψ(r)

であるが、V(r+a)=V(r)である事から、a だけ座標をずらした波動関数も同じシュレディンガー方程式を満足する

[ p2/(2m) + V(r) ]Ψ(r+a) = E Ψ(r+a)

これらの波動関数同じエネルギー固有値を持っているので物理的には同じ状態に対応している(補足)。シュレディンガー方程式からは波動関数の絶対値は決まらなかった事を思い出すとそれらの違いは位相因子であることが分る

Ψ(r+a)=eΨ(r)

そこで座標をL=Na だけずらした波動関数を考えると

Ψ(r+Na) = eΨ(r+(N-1)a) = e2iδΨ(r+(N-2)a) =・・・ = eNiδΨ(r)

とeがN回出てくることになる。ここで先ほど考えた周期的境界条件から

eNiδ=1 → δ= 2π n/N = 2π n(a/L)

ここで nは任意の整数 である。よって波動関数の満たすべき性質として



      Ψ(r+a)=eik・aΨ(r)       k≡(2π/L)     

が証明された。これをブロッホの定理という。そこでブロッホの定理を満たす波動関数についてもう少し具体的な形が知りたい。いったいどんな波動関数になるのだろう? 実は答えは単純である。波動関数Ψ(r)から指数関数eik・rだけ括りだして新たな関数u(r)を導入する。つまりΨ(r)=eik・r u(r) である。するとブロッホの定理は、u(r)=u(r+a)の場合にのみ成立することがわかる。このような波動関数をブロッホ波動関数と呼ぶ。まとめると周期ポテンシャルV(r+a)=V(r)に対応する波動関数は



      Ψ(r) = eik・ruk(r)      (k=(2π/L)n)     

が証明された。一般にkの値に応じて周期的な波動関数は異なる可能性があるのでuk(r)と書くことにする。



三次元の場合には結晶構造は三つの格子ベクトル ai (i=1,2,3)で決定される。ai方向への並進対称性とそれに対応した位相因子 δi= (2π/Li)ni が三つ現れる。またブロッホ波動関数は




      Ψ(r) = eik・ruk (r)       

で与えられる。ここでkは格子ベクトルaiに対応した逆格子ベクトルbiを用いて



      k = (n1/N1)b1 + (n2/N2)b2 + (n3/N3)b3       


逆格子ベクトルbjは結晶格子と

aibj=2πδij

の関係をもつものである(補足)。この格子ベクトルと逆格子ベクトルの直行関係を使うと、例えばa1方向に波動関数をずらすと

Ψ(r+a1) = eik.a1 Ψ(r) = e2πi n1/N1 Ψ(r)

となる。これをN1回繰り返せば一周期 L1 ずれた事になるが、exp(2πi×整数) = 1を使えばそれは元の波動関数に戻ることが分る:

Ψ(r+N1a1) = e2πi n1 Ψ(r) = Ψ(r)


==================================================================
(補足) 縮退がある場合にはエネルギーが同じであっても異なる波動関数が存在する。ここではそういった事は無視して突き進むことにする。

(補足)b1≡2π[a2×a3]/[a1・(a2×a3)]

1→2, 2→3, 3→1という置き換えをすればb2が作れる、更に置き換えを繰り返せばb3が得られる。

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