2017-07

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≪ 天才と神一重 ALL 北村薫 短編集「水に眠る」 ≫

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温度 その2

最近(2007年6月)、清水明著の「熱力学」で負の温度のというものは有り得ないと言う事が書いてあることを知った。どうも、そういった熱力学と整合しないモデルで、つまりは現実には実現しないということらしい。イジングモデルのような系を持ってくれば単純に実現しそうに思えるのだが、駄目なのかもしれない。未だに納得はしていないが、専門家の先生が著書に書く程なので、とりあえず、ここに記しておく。



統計力学における温度の定義について簡単に説明したい。統計力学とは系のミクロな情報から熱力学性質を記述する方法である。その基本となるアイディアは「等確率の原理」と呼ばれるミクロな状態の実現確立に関する一つの仮定である。等確率の原理について説明した後に平衡状態を記述するパラメーターとして温度を導入する。

簡単のために3粒子(G, B, R)を用いて系のミクロな状態について説明する。それぞれの粒子はE=0, E0 , 2E0 , 3E0,・・・とE0の整数倍の値を取りうるとする。以下簡単のためにE0 = 1 とする。3粒子全体のエネルギーはΣEi=EG + EB + ERである。さて統計力学では全体のエネルギー(=マクロなエネルギー)が決まった値を持つときにミクロな状態、つまり(G,B,R)粒子個々のエネルギー(EG, EB, ER)はどの様になっているだろうかという事を調べる。以下の図を参考に可能なミクロな状態を列挙してみよう。


■E=0
全体のエネルギーがゼロの場合は、全ての粒子がエネルギーゼロになければならない。よって
(EG, EB, ER) = (0, 0, 0)
これは図で一番左にある。この状態は三つがEi=0の状態にあるので{ 30 }状態と呼ぶ事にしよう。A個の粒子がi状態に存在する場合に { Ai }と括弧の中に個数、そしてその状態を添え字として書く約束)

■E=1
全体のエネルギーが1となるためには、どれか一つの粒子がEi=1でその他がEi=0 にあれば良い。よって可能なミクロな状態は以下の三通りがある。
(EG, EB, ER) = (1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1)
このような状態の一つを図の中央に描いた。この状態は2つがエネルギー0(20状態)にあり、一つがエネルギー1(11状態)に存在するので、まとめて { 20 , 11}状態と呼ぶ事にする。

■E=2
全体のエネルギーが2になる場合はどれか一つの粒子が全てのエネルギーを担ってE2=2、その他はエネルギー0となる場合。
(EG, EB, ER) = (2, 0, 0), (0, 2, 0), (0, 0, 2)
(右側のグループ中の左の図がその代表)これは{20 , 01 , 1}状態

全体のエネルギーを二つの粒子が分けて持つ場合
(EG, EB, ER) = (1, 1, 0), (0, 1, 1), (1, 0, 1)
(右側のグループ中の右の図がその代表)これは{10 , 2 , 03}状態


このようにして全体のエネルギー与えられるとが可能なミクロな状態を書き下す事ができる。ところが実際にどういうミクロな状態が実現しているのかということはここまでわかっていない。上に揚げたのはあくまで可能性の話である。このままでは物質の中エネルギーを測定したときに、どのミクロ状態が実現しているのかということについて何もいえない。そこで統計力学では、「等確率の原理」というミクロな状態についての仮定をする。








    等確率の原理: 可能なミクロ状態はすべて等しい確率で実現する。



E=1の場合について考えてみよう(E=0は可能な状態が一つしかない)。この場合可能な状態は(EG, EB, ER) = (1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1)の三つだが、等確率の原理によればそのどれも同じ確率、つまり33.3...%で実現するというわけだ。物質の中を覗きミクロな状態が認識できたならこれら3つの状態が同じ頻度で観測されるはずだ。これが統計力学の主張するところである。

次にE=2の場合はどうか。大別すると{ 20 , 01 , 1}状態と{ 10 , 21 , 0}状態の二つがある。個々の粒子のエネルギーを指定する(EG , EB , ER)表示では可能な状態の数は{20 , 01 , 1}状態の場合三つ(=3C1)、{10 , 21 , 0}状態の場合も三つ(=3C2)であるから、3:3でどちらも同じ確率で実現する。

ここで一つ問題を出しておく。E=3の状態は 
{ 20 , 01 , 02 , 13 } 

{ 10 , 11 , 12 , 03 }

{ 00 , 31 , 02 , 03 }

の三つのグループが存在するが、それぞれの実現確立はどうなるだろうか。
 
(補足)ミクロな状態を{ A0 , B1 , ・・・・}という表記でグループ分けすると、そのエネルギーは
E= A*0 + B*1 + C*2 + …
のように、個数とその添え字の掛け算をして足すと得られる。また全粒子数は
N= A + B + C + …
で与えられる。



しかしこの表記はもっと簡単化できる。例えば{ 20 , 01 , 02 ,13} での添え字は省いてしまってもなんら問題はない。なぜなら添え字は数字が何番目の数かだけで決まっているので自明である。よってこれからは具体的な値を代入する場合には単に { 2 , 0 , 0 ,1 }状態のように添え字を省いて書く事にしよう。粒子の取りうるエネルギーが(k+1)番目の微視的エネルギー状態まである場合には状態を指定する数をk個まで増やして { n0, n1, n2, ...., nk} と一般化すればよい。これはベクトルの成分表現とみなせるのでn ≡ { n0, n1, n2, ...., nk} と書くことにしよう。このように各エネルギーレベルに何個の粒子が存在するかということを指定する方法を粒子数表現と呼ぶ。粒子数表現が与えられたとしても個々の粒子のエネルギーに着目すると取りうる微視的な状態はいくつかある。例えば3粒子が二つのエネルギー準位だけに存在する場合を考えると

粒子数表現: n={ 3 , 0}
個々の粒子のエネルギー ( EG, EB, ER ) = E0×( 0 , 0 , 0 )

粒子数表現: n={ 2 , 1}
個々の粒子のエネルギー ( EG, EB, ER ) = E0×(0, 0, 1) or (1, 0 , 0 ), (0 , 1 , 0)の3状態


粒子数表現: n={ 1 , 2}
個々の粒子のエネルギー ( EG, EB, ER ) = E0×(0, 1, 1) or (1, 0 , 1 ), (1 , 1 , 0)の3状態

粒子数表現: n={ 0 , 3}
個々の粒子のエネルギー ( EG, EB, ER ) = E0×(1 , 1 , 1)

という具合である。それでは粒子数表現n = { n0 , n1 , n2 , .....}が与えられた時に取りうる微視的状態数はいくつになるだろうか。少し考えてみると面白いが答えは

W(n) = N!/(n0!n1!n2!......)

である(0!=1に注意しよう)。ここでNは全粒子の数である( Σi ni = Nの条件を満たす)。例えば上の例でいうと{2, 1}粒子数状態は

W({2, 1}) = 3!/(2! 1!)= 3

と具体的に状態を数えた上の結果と一致している。



さて我々が興味がある粒子数状態は全エネルギーがE= Σi Ei ni、粒子数がN=Σi ni で指定されるものである。この条件を満たすものを n ∈ phys(E,N)と書くことにする。例えば

{3 , 0} ∈ phys(E=0,N=3) ,
{2 , 1} ∈ phys(E=1,N=3),
{1 , 2} ∈ phys(E=2, N=3)

といった具合である。ここで問題

W(E,N) ≡ Σn∈phys(E,N) W((n) = ?

つまりエネルギーEと粒子数Nを固定した場合の微視的な状態nの状態数W(n)に対して可能なnの和を取れ。この問題、まともに和を取ろうと思うと恐ろしく難しい問題になる。つまりΣn∈phys(E,N) N!/(n0! n1! n2! ....) を真面目に計算すると恐ろしい目にあう。ところが答えはいたってシンプル

W(E,N) ≡ (N+E-1)!/[(N-1)! E!]

なのである。もちろんすごい技を駆使して複雑な和を取る事は可能だが長くなるのでここではこのシンプルな答え受け入れて話を先にすすめる。例えば自明な場合 E=0, N=3の場合にW(E,N)=(3+0-1)!/[2! 0!] = 1であるが、真面目に和を計算すると

phys(E=0,N=3)= {3, 0 , 0 , .....}の一つだけ、よって

Σn∈phys(0,3)N!/( n0! n1! n2!....) = 3!/(3! 0! 0! 0! ....) = 1

で一致する。少し複雑な場合では E=2 , N=3 では W(E=2,N=3)=(3+2-1)!/[2! 2!] = 6 であるが和の計算では

phys(E=2,N=3) = { {1,2, 0, 0, ..... }と{2, 0, 1, 0, 0, ....} }の二つの状態がある。

Σn∈phys(2,3)N!/( n0! n1! n2!....) = 3!/(1! 2! 0! 0! ....) + 3!/(2! 0! 1! 0!....) = 3 + 3 = 6
と一致する。




 ******  まとめ *************



微視的なエネルギー状態がE1粒子=0,1,2,3, .... とトビトビの値を持つとしたときにエネルギーと粒子数を指定するとミクロな状態の数は

W(E,N) ≡ (N+E-1)!/[(N-1)! E!]

で決まる。 またこのW(E,N)個のミクロな状態はどれも等しい確率で実現する(等確率の原理)。よって個々の状態の実現確立はP=1/W(E,N)である。

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