2017-05

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≪ 現代の量子力学(JJサクライ) ALL 解析力学(大貫義郎) ≫

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磁石とイジング模型 2 (平均場近似)

イジング模型は格子上のスピンを考える模型です。格子点i=0,1,2,...Nにスピンが存在しているとししてハミルトニアンを

E = - J Σ < i,j > Si Sj - H Σi Si   ......(1)

とします。Si=±1は格子点iでのスピン、+1ならスピンが上向きの状態、-1なら下向きです。< i,j >は隣り合うスピンの組み合わせに関して和をとることを意味し、これを近接相互作用と呼びます。このとき、i点のスピンは隣りのj点のスピンと揃った方がエネルギーが低くその結合係数はJ>0で与えられます。またスピンは外からかかった磁場Hに平行な方がエネルギーが低いことを示すスピン磁場相互作用項 H Siも存在します。 磁化mを調べまてみましょう。磁化はスピンの平均値として次のように定義されます。

m ≡ < Si > = Σ{ S =±1 } Si e-βE{ S =±1 } e-βE  ........(2)

一般には格子点によってスピンの平均値は異なりますが、以下では磁化mは格子点に依存しない定数だと仮定します。これは非常に多い(N~1023)統計力学系を考えているので磁石内部の磁化は場所に依らずに一定だろうという直感に基づいています。Σ{ S =±1 }は全てのスピンの上向きと下向きについて和を取る事を意味します。具体的に書くと

Σ{ S =±1 } = ΣS1 =±1 ΣS2 =±1 ΣS3 =±1 ......ΣSN =±1 ...........(3)

上で与えたハミルトニアンを代入して磁化m,つまりスピンの平均値を計算できれば問題は解けたことになりますが、やみ雲に計算しても巧くいきません。先ずi番目の格子点にあるスピンSiについての和を取ってみましょう。ハミルトニアンの中でSiの関与した項だけ書き出すと

E = ..... -J ( Si-1 Si + Si Si+1) -H Si - .....

Siに関したスピン平均の和だけ実行します。計算は単純ですが式長くなって見づらいので< S >=ΣSi e-βESi e-βEにおいて分子と分母を別々に書くと

分子 = ΣSi Si e-βH
= e βJ ( Si-1 + Si+1)+βH - e -βJ ( Si-1 + Si+1)-βH

分母 = ΣSi e-βH
= e βJ ( Si-1 + Si+1)+βH + e -βJ ( Si-1 + Si+1)-βH

となります。分子分母をまとめるとtanh(x)=(ex-e-x)/(ex + e-x)の形なので

m = ΣSi Si e-βESi e-βE = tanh[ βJ( Si-1 + Si+1 )+βH ] .........(4)

が得られます。Siは和を取ったので消えましたが、その結果近接点でのスピン, Si-1とSi+1 に依存したtanhが出てきました。残った格子点上のスピンに関して和を取る事はこのtanhについての平均値を取る操作に対応しますから

m = < tanh[ βJ( Si-1 + Si+1 )+βH ] >  .......(5)

が得られます。計算を更に進めるにはSi-1とSi+1についての和を取っていかなければなりませんが、するとSi-2, Si+2の更に複雑な関数が現われることが予想されますからこの方法で進んでいくのは得策ではありません。そこで大胆な近似をしたいと思います。それは(5)式の右辺にあるSi-1とSi+1をその平均値mで置き換える事です(補足)。

< tanh[ βJ( Si-1 + Si+1 )+βH ] > 
→ tanh[ βJ( < Si-1 > + < Si+1 > )+β H ] = tanh[ βJ(2m) + β H ]

演算子をその平均値で置き換えることを平均場近似と呼びます。平均場近似を数学的に正当化するのはなかなか大変なことです。そしてこの方法が全くおかしな結果を生み出す事さえあります。ここでは平均場近似の正当性の議論はせずにその結論だけを見てゆくことにします。今後ずっと使いますから再度平均場近似の出発点となる式を書いておきます。

m = tanh[ 2 β J m + β H ] ........(6)

次回以降この式から得られる磁石の性質を調べてゆきます。


*****************************************************************
(補足) < f(x) > = f( < x > ) は一般に成立しません。例えば簡単な例としてサイコロの目のxが出る確率について試して見ましょう。サイコロの目xが出る確率は1/6なので

< x > = 1×(1/6) + 2×(1/6) +3×(1/6) + 4×(1/6) +5×(1/6) +6×(1/6) = 7/2 = 3.5

サイコロの目の平均値は3.5です。ところで

< x2 > = 12×(1/6) + 22×(1/6) +32×(1/6) + 42×(1/6) +52×(1/6) +62×(1/6) = 91/6=15.2

< x >2 = (7/2)2 = 49/4 = 12.3

となり、< x >2と < x2 >は異なります。
*****************************************************************
(補足)ここではイジグ・スピンの個数はN~1023で非常に多いと書いたが、これは理想気体の場合の気体分子の数でした。本来固体中の原子の数を書くべきでしたがオーダー的にはアボガドロ数とあまり変わらないと思うのでこのままにしておきます。といってもここで考えているモデルはかなり簡単化された磁石のモデルなのであまり具体的な話はするべきでないと思われます。

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