2008-05

ローレンツ変換と虚数時間

ローレンツ変換は4次元時空での回転ではないのか。だとしたらどういうイメージなのかという質問を受けたのでちょっとだけ説明を書きます。 特殊相対性理論では時間と空間3次元を合わせた4次元時空を考え、4次元空間上での座標を用いて理論を組み立てます。以下では簡単のために時間tとx座標だけの2次元座標(ct,x)を考えます。ctは、時間を長さと対等に扱うためには光速c≒3.8×108[m/s]をかけて単位をそろえるためです。通常は(ct,x)=(x0 ,x)と書いて時間を第ゼロの座標として書く記法が標準的です。

ところで特殊相対性理論の中心となる考えはローレンツ変換で、それは長さを不変する変換です。ここで使う長さとは時間tと位置xをつかって

s2 ≡x2 - (ct)2 = x2 - (x0)2

で定義されるものです。ユウクリッドの幾何学では2点を結ぶ長さは各座標の差を二乗和しものでしたが、特殊相対性理論でいう長さは時間成分の二乗和にマイナス符号がついていますから日常生活で使う長さとは異なるものです。ところで昔相対性理論を習った頃には時間だけ虚数iをつけて4次元時空での座標とする方が便利だという先生もいまして w=i×ctを定義して

s2 ≡x2 - (ct)2 = x2 + w2

と書けばこれはまさに通常のユークリッド幾何学での長さの定義になって便利だというのです。 虚数時間wを使って書いた場合に長さを不変にする変換として直ぐに思いつくのは座標回転です。座標回転は高校の線形代数で勉強したように

lorentz_kaiten_kyojikan_4.gif


です。この変換を元の時間tを使って書き直すと


20070101023627.gif


となります。ここで回転角θをi倍したものをφ=iθ と書くとこの式は以下のように書きなおせます。

20070101023635.gif


実は通常ローレンツ変換と呼ばれるものは相対速度vで動く慣性系同士の関係として定義され、上で用いたφと

cosh[φ]=1/√(1-β2)
sinh[φ]=β/√(1-β2)

の関係にあります。ここでβ≡v/c(二つの慣性系の相対速度vを光速で割った量)です。上でも求めたφには物理的な意味付けがなかったわけですが、ここでローレンツ変換で導入された相対速度v,又はそれを光速で割ったβを通して物理的な意味づけができたということになります。そしてパラメーターβを使って考えるとφが実数だということが分り、そこから最初の導入した回転角θは虚数だったという結論が導かれます。つまり虚数時間を使った形式ではローレンツ変換は虚数角の回転と見なせるという事です。そんなこんなでローレンツ変換は4次元時空での回転とみなせる事にはなりますが回転角は虚数になります。イメージはどうなるんだという質問には残念ながらイメージはありませんと答えるしかないようです。

まとめると以下のようになります。
数学的にはローレンツ変換は4次元時空の回転と対応がつきます。具体的には虚数角を用いた回転と見なせます。ですがあまり物理的なイメージを作り上げようと努力するよりもあくまで数学的な対応があるというくらいに解釈しておいた方が良いのではないでしょうか。少なくとも私にはそれ以上の事は分りません。






コメント

こちらこそ

わざわざこちらに書き込みに来ていただいて、有難うございます。だいぶ前に書いた記事なのに、こんな記事が目にとまることもあるんだなという感じです。

私自身は虚数時間や虚数角は単なる数学的なトリックだと思っています。数学的なトリックだからと言って間違いや嘘ではなく、数学としては全くまともだが、物理的な解釈はまた別なものという意味です。虚数時間でよく引き合いにだされるホーキングの本はまだ読んだ事がないので、その関係が分かりません。いつか読んでみたいとは思っていますが。

はじめまして

はじめまして。
物理関連の記事を楽しみながらいつも読ませていただいております。
遅まきながら、この記事を僕のブログで引用させていただきました。

ブルーバックスから虚数時間の本が出たとき、僕もこれを読みましたが当時は意味をちゃんと理解して読んでいませんでした。その後、竹内薫さんの著作やこちらのアトムさんの記事を読んで正しく理解できるようになりました。ありがとうございます。

それにしても「虚時間」や「虚数角」などを受け入れるって最初は戸惑いましたね。でもオイラーの公式(exp(ix)=cos(x)+i*sin(x))だって回転角をあらわす指数のところが虚数ですし、量子力学ではいちばんよく使われる式なので「虚数角」もあながち空想だけですませるわけにはいかないな、と思いました。

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