2017-03

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≪ オイラー・マクローリンの総和公式 (証明) ALL 電子の自己エネルギー その3 ≫

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調和振動子 その4

前回疲れて中途半端におわった生成消滅演算子の導入ですが、まとめると




      [a, a] = 1 、  [N, a] = a 、  [N, a ] = - a

N|n>=n|n>となる個数nの状態は|0>の状態からaをn回かけて得られます。

|n> = 1/√n! (a)n |0>

ここで1/√n!は規格化因子(補足1)です。大事なのは出発点の|0>がN|0>=0となることさえ認めればあとは全て生成消滅演算子の代数から帰結されるものだという事です。またaをかけると個数状態nからn-1と一つ下がり、aをかけるとn+1へと一つ上がることも前回やりました。規格化因子(補足1)までしっかり決めてやると




      a|n> = √n |n-1>  ,   a|n> = √(n+1) |n+1>

となります。 次回は物理の問題に戻りましょう。



(補足1)
前回 a,a は個数演算子の固有値を上げたり下げたりする事を学びました。よって

a |n> ~ |n-1>   , a|n> ~|n+1>

であることは分っています。関係が「=」ではなく「~」なのは固有値の式は規格化定数を決めてくれませんから、定数倍の任意性が残るためです。この定数を決めるために

a |n> = A |n-1>   , a|n> = B |n+1>

と(A, Bは定数)とおきます。ここで生成消滅演算子の性質を使ってA,Bを決定しましょう。計算をした事がない人はこの方法のうまいところを感じ取ってください。やった事がある人には退屈な代数計算かも知れません。まずa|n>を二乗すると

|a|n>|2 = < n| a a |n> = < n| N |n> = n = n

二乗する事によって個数演算子が出て来るのがミソです。一方でこれは |A|n-1>|2 = |A|2に等しいですから|A|2=n。つまり a |n> = √n |n-1> が求まります。同じようにa| n >もやると

| a |n >|2 = < n | a a | n > = < n |( a a + 1 ) |n> = = N + 1

よって a|n> =√(n+1) |n+1> となります。少し注意深い人はこの方法で A、B の絶対値しか決らない事が気になるかもしれませんが、量子力学では状態の位相は意味がないので便利なように決めて良いのでした。




(余分な補足:アトムの解釈論)
生成消滅演算子で状態を上げ下げしてこの方法に慣れてくると疑問に思うことがあります。それは関係式

a|0> = 0

のために個数nが負の状態が計算に現われないところで、何か神秘的なものを感じます。ところでこの式は「状態がゼロ」であると見てはいけません。なぜなら状態はあくまで状態ベクトルであり、ゼロという数ではないからです。よってこの式は

a|0>= 0 |-1>

と個数が-1の状態(物理的な意味はともかく|-1>は存在します)にゼロの係数がかかったものと見るべきでしょう。それならやっぱり個数が負になるような状態ベクトルも存在すると考えるべきでしょうか? もしもそんな状態が存在するなら我々の扱っている量子力学を拡張したり、または個数が負の”変わった(?)”状態も扱えるような方法を開発するべきなのでしょうか。こういったところをクリアーにしておかないと量子力学が奇跡的な綱渡りをしているもの、基礎がしっかりしていない理論であるかのような印象が残ります。素朴な疑問は解答が難しいのですが、私なりに少し詳しく調べてみたいと思います。

先ずN|-n>=-n|n>となる負の状態は存在しているのでしょうか?答えは一応イエスで、負の個数に対応した波動関数はWeberの微分方程式を満足する解として知られています。生成消滅演算子を位置表示で書くと

a = (1/√2) ( z + ip ) = (1/√2)(z + d/dz)
a = (1/√2)( z - ip ) = (1/√2)( z - d/dz)

となります(ここでz=x/√(h/mw)は位置xを無次元にした変数、そしてpは無次元の運動量演算子p=-id/dz)。すると個数演算子は

N = aa = (1/2)( z2 - (d/dz)2 - 1 )

と与えられます。個数演算子の固有値がnの波動関数は

1/2 ( z2 - d2/dz2 - 1) Ψn(z) = n Ψn(z)

の解ですが、この答えはWeber D関数を使って

Ψn(z) = Dn(21/2z)

と書けます(例えば岩波数学公式IIIの76ページ)。nは正である必要も整数である必要もありません。このWeberD関数は n=0 又は正の整数の場合にはエルミートの多項式を使った通常の波動関数に帰着し、それ以外では無限遠点(z→∞) での振る舞いが悪くて2乗積分可能な関数ではありません。つまり規格化できない状態ベクトルです。例えば

Ψ-1(21/2z) = √(2π)exp(z2/2) (1 - Φ(21/2 z)

Φ(z)=1/√(2π)∫[-∞,z]exp(-t2/2) dt

となります。しかし規格化をしなくても微分方程式の解としては全く問題がありません。その意味では|-1>は存在しています。ただ

< -1 | -1 > = ∞ 

となってしまいますからこの状態が何かの期待値に効いてくるようなことがあれば量子力学が破綻するでしょう。その意味で

a|0> = √0 | -1> = 0

の関係式は非常に大事なわけです。我々の出発点である個数ゼロの状態は個数が負の状態へは遷移できないという意味で|-1>は存在しないのと同じ事です。(数学的に|-1>が排除されるという意味ではありません)。繰り返しますが


<<負の個数状態に関するアトムの解釈>>
消滅演算子の代数で見ると個数が負になる状態(|-1>, |-2>, …) は存在する。それらは a|0> = 0のお陰で個数が正の状態たちとは分離している。よって |-1> が存在しても物理的な結果には効いてこない。

という結論です。状態空間が分離しているとは|0>にaやaのどんな複雑な式をかけても個数が負の状態は得られないという事で {|0>,|1>,|2>、…} の空間と{|-1>,|-2>,|-3>,…} の空間が無関係に存在しているという事。勿論これは物理的にはエネルギーに最低状態が存在することを意味します。

因みに個数が負の状態ベクトルから我々の基底状態|0>への遷移は許されています。それは

a|-1> = |0>

の関係式のためです。幽霊は我々の世界に入ってこれるが、我々は幽霊の世界に入れない? これは何か意味があるのでしょうか?暇な人は考えてください。ただし試験前の学生さんはこんな事に気を取られない方が得策でしょう。

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