2017-10

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古典力学の理想的状況について その2 (運動量保存)

ニュートン力学を習い始めてしばらくすると、運動量保存則が導入される。たとえば高校物理では、運動量保存則は運動方程式(第二法則)と作用反作用(第三法則)から導かれる一つの定理であるという説明がなされると思う。数学の言葉で言えば、定理とは基本的な公理から導かれるものであり、出発点の公理を認める限り、証明された事実として常に成立する。つまり、運動量保存則はニュートン力学では常に成立する証明済みの事実である。

ところが、少し学習が進むと、どうも運動量保存則は成り立たない場合もあるようだということに気がつく。例えば、重力加速度gで自由落下する物体、中心力ポテンシャルで運動する惑星問題、これらでは運動量保存則は成立しないことになっている。自由落下では速度は増してゆくし、中心力ポテンシャル中の運動では、惑星は回転運動をするわけだから、やはり速度(の方向)がかわっている。速度が変われば運動量は変化する。力学を習い始めた初心者は大いに混乱するだろう。なぜなら運動量保存則は証明された定理だと主張しておきながら、問題によっては運動量保存則が成立しないという例外を見せ付けられることになるからだ。 あまり長く引っ張る話題でもないので、答えを言うと、上に上げた例であっても運動量保存則は常に成立している。ただし、運動量保存則は、関係する系を全て含めた、全体に対して成立する法則だというだけだ。例えば物体Aに対するニュートンの運動方程式、

dpA/dt=FA

は当に運動量が変化すること(つまり運動量が保存しないと主張している)わけであるが、これはAの運動量に変化を及ぼす力FAの源を考慮に入れると、運動量が保存することを示せる。つまり力を加えた物体Bが存在し、そのBまで含めてしまえば、運動量は保存するという主張だ。なぜならBの運動方程式

dpB/dt=FB

と作用反作用の法則

FB = - FB

を使えば

d (pA + pB)/dt = 0

が示されるからである。これが運動量保存則の証明そのものである。つまり、自由落下や中心力ポテンシャルの問題でも、同じことをやれば運動量保存則が示されると主張したいわけである。「なーんだ、そんなつまんないことを言いたいのか」と思われたら仕方がないが、そんなつまんない事でつまづく人もいるって事である。もちろん私の事だ。




運動量保存が成立しないとされる例、自由落下と中心力ポテンシャルによる惑星運動について考え直してみよう。自由落下では

dp/dt = -mg

という運動方程式を考える。この力の源は何だったかというと、もちろん地球の重力である。それなら地球(運動量をP=MVとする)に対する運動方程式

dP/dt = +mg

を考慮すればよい。自由落下する物体と地球をあわせた系では運動量は保存する。つまり

d(p+P)/dt =0

である。鉛直下に自由落下する物質があれば、その物質に引っ張られて鉛直上に動き出す地球があるというわけだ。ただし地球の質量は
6×1024kg と非常に大きいので、地球が高々1kgの石に引っ張られて動く場合の速度たるや

P = -p → V = - (m/M) v = 0.000000000000000000000001 [m/s]

程度である。(石の落ちる速度は1[m/s]とした場合)。ゼロの数を間違えてなければよいが…。




この考察を中心力ポテンシャルに対しても行えば、やはり運動量保存則が成立していることが納得してもらえるだろう。ただしポテンシャルの場合には少し複雑である。何故なら、ポテンシャルという概念が、空間に固有の性質として扱われることが多いからである。つまり力を及ぼす源について触れずに、それは空間の性質とみなされることがあるわけだ。そういう見方をすると反作用が働く相手が見えてこないのだ。これは一般相対性理論までいくと、運動量保存則が直感的に理解しずらい原因ではないかと思われる(この点に関してはあまり自信がない。相対性理論でも運動量保存則は直感的に分かると言う方は是非教えてください)。

しかし、ポテンシャルの物理的な意味を考えてみると、それを生み出す源が(少なくとも古典力学では)必ず存在することに気がつくだろう。またポテンシャルを考える場合、その源は不動であるという理想化がなされるのが普通である。例えば太陽の周りの惑星運動を考えてみよう。通常、力学演習では、太陽の作るポテンシャルを考えて、それがつくる中心力によって惑星がケプラー運動をすると考える。これは太陽が動かないという理想極限(よってポテンシャル中心も不動)を考えていることになる。または太陽の質量が無限大の極限を考えていると思っても良い。この理想極限のために、運動量保存則が見えてこない。図を見ながら説明しよう。

下の図は1/rの力によって引き合う二体問題を数値的に解いたものである。
(万有引力、つまり1/r2の力でシミュレーションをしたつもりだったが、入力ミスで
実際には1/rの力を考えたものとなっていた。ここでの運動量保存則の議論には力の法則は関係ないので、1/rという特殊なケースのシミュレーションの図をそのまま
載せておく事にする。間違いを指摘してくれたselpoさんに感謝します。)

最初の図は質量の比が1:5、次が1:10,そして最後が 1:20の場合のシュミレーションである。図の真ん中に小さい軌道を描いているほうが質量の大きな物体である。軽い方が質量の大きな物体の周りを回るわけだ。そして大質量の物体の軌道は、質量の大きさに反比例して中心に局在してゆく。これは直感的にも明らかだろう。よって太陽が地球の質量の100000倍以上大きいことを考えると、太陽の運動などほとんど中心に静止した点としか見えないだろう。

2bodyfig01.gif


2bodyfig02.gif


2bodyfig03.gif



さて太陽の運動が局在点のように小さく見えようが、理論的には微小ながら運動していることになる。なぜなら物理的には∞の質量というものは存在しない、つまり、どんなに大きな質量であっても、それは高々有限であるという立場だ。そして小さい速度と大きいが有限な質量をかけると、もちろん有限な運動量が得られる。その場合、もちろん地球と太陽を含めた場合の運動量は保存している。

p+ P= 一定  

一方で、具体的に考えると、太陽の質量があまりにも大きいために、その運動の速度は地球の速度にくらべ10-5程度小さい。それは、あまりにも小さいために、太陽の速度を無視できるだろうと考えると運動量保存則が破れたかのような誤解が生まれる。ここで注意するべきは、速度が小さい極限、つまり太陽が静止する極限を考えるということは、その質量が無限大の極限である。しかしこの極限は、小さい速度×大きな質量=有限となるような制限を常に忘れてはならない。

つまり運動量保存則が破れたかのように見える中心力ポテンシャル問題は、質量無限大(または速度がゼロ)の極限操作のために、ポテンシャルを作り出す源の有限な運動量が見えてこないためである。具体的には

限りなく大きな質量×限りなく小さな速度=有限な運動量

という制限がついた極限操作が、ポテンシャル問題では隠れてしまうのだ。とりあえず書きたいことは書いたので、とりあえずバージョン0.1としてアップしておきます。手直しが後で入ることでしょう。

今回は運動量保存則はどんな状況でも、究極的には成り立っているということを言いたかったわけですが、次回、舌の根も乾かぬうちに、運動量保存は破れるていると考えても良いということを書きたいと思います。



余談;数学では、出発点である公理系を組み替えて同じ体系が作れるということは良くあることである。同じように、ニュートン力学においても、運動量保存則を基本的な法則として力学を定式化することは可能であろう。しかし古典力学においては、やはりニュートンの定式化した運動の三法則を出発点としたほうが分かりやすいと、私は思う。それは私たちが力という量が非常に直感的に感じるからであろう。例えば物体の運動が変えられたのを見て、「力が働いた」と思う方が、「運動量を交換した」というのより物理的な感じがするのではないだろうか。慣れの問題もあるだろうが…。


コメント

解決

selpoさん、コードが見つかり,私の入力ミスである事が判明しました。
確かに万有引力、つまり1/r^2の力では軌道は2次曲線でした。記事の運動量保存則の
議論とは抵触しないので、図はそのままのこして,文章の方を訂正することにしました。

いろいろと教えていただき有り難うございました。

ありがとうございます。

もしかしたら、万有引力の2乗則を間違ったのかもしれないなあと
思ったんですが・・・、シミュレーションのソースファールがPCに
入っていなくて確認出来ない状況です。 やっぱり,ソースはしっ
かりと管理しておくべきですね。

コメント有り難うございました。

万有引力

自前のシミュレーターで<F>=-GMm<r>/r^2としてみたら(<a>はベクトル)、図のような運動になりました。
しかし、これでは距離の二乗に反比例する力ですので、正しくは<F>=-GMm<r>/r^3としなければなりません。

そうですね。

何故,こうなったんでしょう・・・。 探してみましたが、ソースが見つからない。うーん、なにか保存則でもちゃんとチェックしておくべきでした。

図を見た限り,数値誤差なんてものじゃないようですから,運動方程式の入力でも間違って
いるのか・・・。しばらくこのまま放置しておきますが、ソースを見つけて原因究明したいと思います。 

シュミレーション

万有引力で引き合う2物体の起動は二次曲線になるはずでは・・・?

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