2017-11

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≪ Eye Learning  δポテンシャルによる散乱 ALL 量子力学にける波束 2 ≫

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量子力学における波束 1

量子力学で散乱問題などを扱う時には、通常平面波を使って計算を行います。平面波は運動量の固有状態なので、散乱行列の計算が楽です。一方で、これは電子の位置の不確定性が無限大という、特殊な状況を考えていることになります。実際の散乱実験では、電子はある程度位置が確定した状態なので、より現実的な計算をするとなると、波束を使った方がよいでしょう。波束とは、運動量に多少の広がりを許し、粒子の位置が(ほぼ)確定した状態を重ね合わせによって実現したものです。

数学的な詳細も書こうと思いましたが、ネット上でダウンロードできる詳しい解説(非常にきれいにまとまったPDF:KENZOさんによる波束の解説記事)が存在しますから、わざわざ読みづらいブログの記事にするまでもないでしょう。よって計算は省き、ここでは波束の物理的な性質を中心に書きたいと思います。


さてここでは自由粒子の場合を扱います。ポテンシャル中に束縛された波束について考えるのも非常に面白いでしょうが、簡単な自由粒子だけに的をしぼります。自由電子の波動関数はシュレデインガー方程式

 -ih dψ/dt = H ψ

に従います。ここでH=p2/(2m)で、波動関数ψ=ψ(t,x)は時間と位置に依存しています。この微分方程式は次の平面波解を持つことはすぐに理解できるでしょう。

ψp = exp(i/h[px-p2t/(2m)])


これは運動量pを持った電子の波動関数です(運動量固有状態)。シュレディンガー方程式は線形微分方程式ですから、解の重ね合わせをすることができます。よって一般解は

ψ(t,x)=∫dp φ(p) exp(i/h[px-p2t/(2m)])

と運動量について重ね合わせたものになります。φ(p)は運動量空間での波動関数で、平面波解の重み関数とも解釈できます。自由粒子の場合には、φ(p)は任意で、それぞれに対応して形の異なる波動関数が得られます。計算が簡単だからという事と、運動量と位置の最小不確定性を持つ状態が良さそうだという予想から、重ね合わせの重みはガウス型波動関数φ(p)=exp(-(p-k)2/(2σ2))を考えてみましょう。

重ね合わせの積分を実行すると(KENZOUさんのノートを参考にして下さい)、答えは

ψ(t,x) = √[2a(t)√π] exp(i/h a(t)[ kx - k2t/(2m)] -a(t)σ2x2/(2h2)])

a(t)=1/(1+it/T) ,( T≡ mh/σ2)


波動関数の二乗は粒子の位置に関する確立分布を与えます。計算をすると

|ψ(t,x)|2~|a(t)|exp(-|a(t)σ|2[(x-vt)/h]2]

となります。v≡k/mとしました。この式は波動関数の二乗のピークがx=vtという古典的な運動に従っていることを示しています。またa(t)があるために波動関数は時間がたつとノッペリと広がってゆくことも分かります。t=0での波動関数は運動量に関してΔp~σで広がっており、位置の広がりは不確定性原理からΔx~h/σで与えられると予想されます。|ψ(t,x)|2は指数関数はxに関してガウス分布をしており、確かに

Δx(t)~h/|a(t)σ|=(h/σ)√[1+(t/T)2]

となっており、t=0では運動量の不確定性から決まるΔx(t=0)=h/σとなっています。この位置の広がりは、a(t)のために、時間とともに増大していきます。そして波動関数が初期に与えられたΔx=h/σの幅からずれて来るのは時刻tがT程度になったときでしょう。なぜなら t << Tなら a(t)≒1と近似でき、a(t)の効果は無視できるからです。

よって波動関数は、t>>T の領域では最初に与えられた形を崩し、位置に関してどんどん広がって行きます。逆にいうとt<<Tなら、波動関数は最初に与えられた形を保ったまま運動を続けると見なしても良い事になります。その時間領域では、電子の波動関数は位置に関してはある程度確定(初期に与えられた位置と運動量の最小不確定性関係を満たした状態)した値を持っており、これは粒子的な描像が成立します。

ところで、σは運動量の広がりをあらわすパラメーターでした。よってσ=mΔvと書いて、速度の広がりΔvを導入します。またエネルギーはE=(1/2)mv2で与えられる事からエネルギーと速度の広がりの関係はΔE=mvΔvとなります。これらを考慮すると


T = mh/σ2) 
  = h/(mΔv2) 
  =(h/ΔE)(v/Δv)

と書くことができます。エネルギーの不確定性で与えら得る時間をΔt≡h/ΔEとして、Δvを小さくとれば、電子の波動関数が広がり始める時間TはΔtに比べて非常に大きくなります。

まとめると、エネルギーがほぼ確定し、x=vtにピークを持つガウス波束は、Δvを小さくとっておけばTが非常に大きいため、その広がりは無視できる事になります。またこの状態はxの広がりがガウス分布で与えられるので位置に関してもある程度の確定値を持つと考えてよいでしょう。これは古典的な粒子の性質を持っていると言って良いでしょう。こういった理由から散乱問題でガウス型の重みをつけた波束はよく使われます。その上解析的な計算も容易です。

次回、波束をつかった解析で古典的な極限がどのように実現されているかについて書きたいと思います。

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