2017-05

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≪ 動物奇想天外もびっくり ALL 代数学の基本定理とコーシーの積分公式 ≫

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コーシーの積分定理 1

留数定理とかコーシーの積分定理と呼ばれる積分公式がありますが、これは複素関数論における、最も重要で美しい成果ではないでしょうか。この定理に関する数学的な証明や解説は複素関数論と題した本なら必ず説明があるでしょうし、ブログは細かい議論をするのに適していないと思うので、ここでは、それがどの様に美しいのか?ということを私なりの視点で書いてみたいと思います。 といっても何か新しい事を書くわけではなく(実際良く認識された見方)、知っておくと得した気分になるような雑学です。コーシーの積分定理を単なる計算方法と見るのではなく、違った視点を持つことによって親しみも湧くだろうと思います。



最も簡単な例として、解析素関数f(z)が, z=a に一位の極を有する場合を考えてみます。

f(z) = A/(z-a)

この場合、留数定理は、


Cdz f(z) = 2πi A  only if a∈Cで囲まれる領域 その他ではゼロ

となります。Cは半時計周りの閉じた経路です。閉じた経路に沿って一周積分すると、その値は積分経路の詳細には依らずに、積分経路が囲む平面内に関数の非正則点 z=a が含まれるか否かだけが問題となり、その値はz=aでの留数(=係数A)で決まるということです。例えば、z=a を囲む経路C1の場合には、この複素積分は値を持ちますが、そうでないC2に対しては積分の値はゼロです。図では閉じた経路として円をとっていますが、これはどんなにクネクネと曲がった経路でも答えは変わらず、大事なことは z=a が閉経路の中に入っているかどうかだけで決まるということです。

cauchy01.gif


関数がもっと複雑な場合には、留数Aは複素関数f(z)をその非正則な点の周りでテイラー展開したときの一位の極の係数となります。例えばf(z)がz=bで非正則な場合には

f(z) = … + A-2/(z-a)2 + A-1/(z-a)1 + A0 + A1(z-a)+…

とテイラー展開して、その一位の極の係数A-1が留数です。また積分経路で囲まれた領域に非正則点がいくつかある場合には、コーシーの積分定理の右辺はそれぞれの留数の寄与を足したものになります。下の図を見てください。一番大きな三角オムスビのような積分経路の中には3つの非正則点があり、それぞれが一位の極を持っているとします。その場合、積分経路を少し変形して卵型の経路で積分を計算してもその値は同じです。変形したことによって中に含まれる非正則点がはみ出してしまうような事がなければ積分の値は変わりません。それなら、どんどん経路を小さくしていって一番内側にある小さな円をつパイプでつないだ様な経路まで変形できます。

cauchy02.gif


さてここで、パイプのような経路には行きの経路と帰りの経路があります。行きと帰りの経路の距離をどんどん縮めて行くと、やがてそれらは一致します。その場合行きと帰りで向きが異なるのでこれらは互いに打ち消しあって、最終的にはパイプのような経路は消えてしまう事ができます。それが下の図です。これは一次元の積分で

ab f(x) dx = - ∫ba f(x) dx

と同じ事です。複素積分になっても積分の向きが異なるとその値は絶対値が等しく符号が変わります。これで簡単ですが、コーシーの積分定理の内容について説明した事になります。それではその心について書きたいと思います。

cauchy03.gif



大事なのでもう一度くり返しますが、「コーシーの積分定理は積分経路の詳細によらない」、これが大事です。積分の値は、経路で囲まれた領域に非正則点(一位の極)が幾つあるかでほぼ決まっています。正確に言うとその留数で決まっているわけですが。これは非常に面白い性質です。積分とは、各点からの寄与を集めてくる操作ですが、コーシーの定理が言っているのは、その各点からの寄与を集めると、何か普遍的な値になっているというわけです。その値は経路で囲まれた領域の一位の極の数とその留数です。

ちょっとした例えで、水槽に金魚を飼っている場合を考えてみます。その場合、私は金魚が水槽のどこに居るかという情報は具体的に水槽を覗いてみないと分かりません。しかし金魚の数を訊かれたならば、いつでも何匹いるかということは分かっています(金魚が死なない限り)。つまり、毎回金魚が何匹いるかを数えてみなくても、最初に水槽に金魚を入れたときに確認しておけば、その値は変化しません。しかし、飼い主でない人が金魚の数を知るためには、水槽をみて、(眼で見て確認できる)小領域ごとに金魚が居るとか居ないとかを判断して、その合計を求めるはずです。この操作は、小さな領域ごとに金魚の数を求め、それらを足す、つまり積分することになります。こういった方法では、数えるたびに金魚が動くので、各小領域に居る金魚の数は違っています。しかしその合計は常に一定です。それはもちろん「水槽全体にいる金魚の数」が変わらないことを知っている人にとっては当たり前のことですね。

例えがあまり適切ではないかもしれませんが、雰囲気は分かってもらえるのではないかと思います。コーシーの積分定理で言えば、各点からの寄与を足し合わせるのが左辺の経路積分の表式(金魚の例で言えば毎回数える方法)、それは実は一位の極の数(とその留数)で決まっている(金魚の例で言えば飼い主が水槽全体には何匹の金魚がいるかを知っている事)というのが右辺。つまりコーシーの積分定理がなぜ美しいかというと、一見全く異なる量を関係付ける式だからです。そして、この関係は、微小な量を集めて構成された積分という量が、実はもっと普遍的な量、数学の言葉を借りて言えば、トポロジーに関係した量で表されるという事です。これは幾何学で言うところのガウス・ボンネの定理に対応したものと言う事ができるでしょう。(ガウス・ボンネの定理の証明は忘れましたが、コーシーの積分定理と似たような方法で証明されていたように記憶しています。間違っていたら指摘お願いします)

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