2017-04

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≪ 言葉が語る唄 ALL シュレディンガー方程式の数値計算 その2 ≫

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WKBJ 3

量子力学のWKBJ近似に関係して漸近展開の手法を簡単に説明しておきたいと思います。例としてよく使われるガンマ関数を使います。考えるのはガンマ関数の積分表示

n!=Γ(n+1)=∫[0,∞]dt exp(-t)tn

のn→∞での振る舞いです。

漸近展開の手法を統一的に見るためにtnの項をexpの肩にあげます。理由は直ぐ後に分かると思うので、とりあえずは数式の変形だと思ってください。

Γ(n+1)=∫[0,∞]dt exp(-φ(t))

φ(t)= t - n log(t)


この式を見ると、φ(t)の値が小さい所が積分に効いてくるということが分かります。なぜなら指数関数の肩には-φ(t)が乗っており、それゆえ被積分関数はφ(t)が大きくなると急激に減少するからです。

つまりφ(t)の最小値のところだけを計算してやれば、この積分の凡その値が出るだろうと予想されます。そこでφ(t)の極値がどこに有るかを調べますが、微積分の知識から、それは一回微分の係数がゼロであるという条件

φ’(t)= 1 - n/t =0

で決まります。この条件の解は t0=nとなります。つまり積分はt=nのところの値で殆ど決まっているというわけです。よってφ(t)を最小値の周りで近似してやると

φ(t)= φ(n) + φ’(n) (t-n) + φ’’(n) (t-n)2+....

となります。単なるテイラー展開です。t0=n でのφ(t)の微係数は

φ(n)= n - n log(n)
φ’(n)=0
φ’’(n)=1/n

です。2次までのテイラー展開を使った場合、φがどのくらい良く近似されているか、n=7, 8, 9の場合を図に描いてみました。黒い線がφ(t)で赤い点線はテイラー展開の2次の近似式です。 t=nの最小値の付近では良く近似されていることがわかるでしょう。

asymgamma01.gif


それでもt=nから外れたらあまり近似がよくないと心配する人もいるかと思います。しかし被積分関数はφが肩に乗ったexp(-φ)なので、t=nから外れた領域での差はあまり重要ではありません。念のために被積分関数 exp(-φ) 自体をプロットしてみます。図を見ればこの近似はそれほど悪くないと納得してもらえると思います。

aymgamma02.gif



φ(t)の2次までのテイラー展開を使った結果、ガンマ関数の積分は

Γ(n+1)=∫[0,∞]dt exp(-φ(t)) ~ exp[φ(tmin)]∫[0,∞]dt exp[-(t-n)2/n]

となります。テイラー展開の0次項、φ(n)は変数tによりませんから、積分の外に括り出しました。展開の1次の項は、極値の条件からゼロです。2次の項が残り、それが被積分関数のexpの肩に残っています。この積分は積分領域を[-∞, ∞]と広げてやればガウス積分の公式(補足)で計算できます。もともとの積分領域は[0, ∞]でしたが、被積分関数が指数関数なので、加えた領域[-∞, 0]は殆ど無視できる効果です。計算を実行すると

Γ(n+1)=√(2πn) nn e-n

となります。これがスターリンの公式として知られるガンマ関数の漸近展開です。この展開はφ(t)のテイラー展開の高次を取り込むことによって更に精度を上げることが可能ですが、ここではこれ以上はやりません。さて、ここで行った近似はどういう状況で良い近似なるのでしょうか。それはφ(t)をテイラー展開したときに無視した項の大きさを評価すればわかります。ここでは2次までのテイラー展開を使ったので、落とした3次の項がどういった状況で無視できるのかを考えると近似の有効な領域がわかるでしょう。結果、スターリンの公式はnが大きな場合に有効な漸近展開であることが分かりますが、詳細は読者への宿題としておきましょう。


(補足:ガウス積分)
[0,∞]dt exp[-a(t-b)2]=√(π/a)

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