2017-06

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≪ ビートルズ全曲集 その2 ALL 粒子性 波動性 ≫

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ベクトル解析 その1: 発散

電磁気学で使うベクトル解析で大事な量、ベクトルの発散について説明する。
ベクトル解析は直感的に分りやすい分野である。自分で手を動かし頭でイメージし、そしてまた手を動かす、この繰り返しさえ怠らなければ誰でも理解できる。先ず2次元の発散について説明し、最後に3次元空間での発散を説明する。2次元のベクトル場は絵に描きやすいため、イメージを得るための良い例題を提供してくれる。具体的な例で説明してゆくからゆっくりとついてきて欲しい。

以下ではベクトル場V(x)について議論するが、ここではベクトルV(x)に一つの具体的イメージを与えておこう。平らな面に流れる水をイメージして欲しい。水は広く分布しており、流れの速度ベクトルは平面状の位置によって様々である。この流速の分布をVとしよう。もちろんベクトル解析自体はどんなベクトル場に対しても成立する一般的な数学を与えるのだが、我々はイメージを持ってこれを理解したい。
流速以外にも、風の流れ、エネルギーの流れ、何でもいいのである。

二次元平面上にある2つの成分をもったベクトル場V=(V1, V2)を考える。イメージを持つために、我々はこのベクトル場を流速ベクトルと考えることにした。さて流速ベクトルが以下のように与えられる具体例を調べてゆこう。

V(x,y)=(x/r2, y/r2)                 (r=√x2+y2)

この流速ベクトルをみて何か言えるだろうか?図を見て欲しい、ベクトル場Vを適当な間隔をとり2次元平面に描いてみた。
div_03.gif

絵を見てなにか分るだろうか?難しい数学を持ち出さなくても直感的になにかわからないだろうか? 直感的に分る事は水が原点から外へと流れているということだ。それでは全ての水が原点から流れ出してきたのだろうか? そうだとしたら原点から水が湧き出している事にはならないだろうか?それを調べるにはどうしたら良いのだろうか。水が湧き出しているかどうかを数学的にどう表現するのだろうか。

実は簡単である。空間のある領域で水が湧き出しているかどうかを調べるには、水の総量がどう変化しているか調べればよい。ある領域に限って、入ってくる水の量と出て行く水の量を比較してやればよいのだ。入ってくる量と出て行く量が等しいなら、湧き出しはない。そうでなければ考えている領域内に湧き出しの源があるはずだというわけだ。

図には-L≦x,y≦L の正方領域が描いてある(L=6)。この正方形の領域での水の総量がどう変化しているのか調べてみよう。先ず左側の辺 (x=-Lの辺)から水がどれだけ外に 流れ出ているのだろうか。単位時間に流れ出す水の量はx=-Lの辺に垂直な流速の成分に比例する。
よってx=-Lの辺を通して単位時間に流れ出る水の総量Sは

S(x=-Lからの流水) = -V1(x=-L) × 2L

で与えられる。x=-Lの辺から流れ出るのは速度のx成分、つまりV1(x=-L)であり、流れ出る水の量を正としているためマイナス符号がつく。水は長さ 2Lにわたる辺から流れ出すため、長さ 2Lを掛けなければならない。

同じ事をx=Lの辺から流れ出る水の量に関してすると

S(x=Lからの流水) = V1(x=L) × 2L

となる。今度は符号は+である、なぜなら流れ出る水の方向はx方向だからだ。先程のx=-Lの辺から流れ出る量とあわせると

S(x=±Lからの流水)= 2L [ V1(x=L) - V1(x=-L)]

となる。ここで正方形の辺の長さを小さくしていく極限を考えてみよう。これは原点を囲む正方形のx=±Lの辺から流れ出る流水の総量である。Lが小さいとして計算すると

S(x=±Lからの流水)
=2L [V1(x=L) - V1(x=-L)]=(2L)2×limL→0[V1(x=L) - V1(x=-L)]/(2L)

=(2L)2xV1
=(2L)21V1

4行目はL→0の極限が流速V1のyを固定したx微分、よって偏微分∂xになることを使った。最後に∂xを∂1と書いた。

正方領域を囲む全ての辺から流れ出る水の総量を知るためにはy=±Lの辺からの流水も考慮しなければならない。

S(y=±Lからの流水)=2L [V2(y=L)-V2 (y=-L)]

L→0の極限をとれば

S(y=±Lからの流水)=(2L)22V2

となる。これらの効果をあわせて正方領域の面積(2L)2で割ってやった量を、ベクトル場Vの発散と呼ぶ。よって発散はある点を囲む単位面積の領域から単位時間に湧き出す(流れ出す)水の総量を与える量である。最初のうちは、単位時間や単位面積という言葉をとりはらって
「湧き出す水の量」と覚えても良いだろう。

発散 = S(単位時間の流水量)/(2L)2 = ∂1V1+∂2V2

この流速ベクトルVに対する発散という量をdivVと書くことが多い。 発散というより「湧き出し」といったほう直感的なのだが、定着した名前を変えるほどでもないだろう。

divV=∂1V1+∂2V2= ∂iVi

最後の表式は同じ添え字iに対する和をとるというEinsteinの約束である。i=1,2と和を取らなければならない。三次元の場合にはV3に対するz微分を足す、つまりz方向から流れ出す水の量を考慮しただけである。
よってi=1,2,3とすれば3次元における発散、つまりある点を囲む単位立方体の面を通して単位時間に出て行く水の総量である。
さて数学的な準備はできた、先程の流速ベクトルV(x,y)=(x/r2, y/r2) の発散をとってみよう。

divV=∂iVi=∂1V1+∂2V2
=[-x2+y2]/r4+[x2-y2]/r4=0

となる。つまり発散(湧き出し)は無いということだ。しかしここで注意しておきたいのが、この計算は原点では正しくない。なぜならx/r2のxによる偏微分、最初の項はr=0では定義できてないのである。もちろん第二項も原点では定義できていない。定義されてないもの同士を足してゼロというのは危険である。よって原点に湧き出しがあるかどうかは慎重にやり直さなければならない。学生時代に教わったうまい方法を披露しよう。物理では良く使うテクニックなのだが、知ってると重宝する。先ず

V=(x/r2-δ,y/r2-δ)

を考え、このベクトル場に対する発散,divをとる。計算の最後にδ→0の極限を取ってやろうというアイディアだ。やってみると

divV=δ/r2-δ

となり、これは一般にゼロでないことがわかる。
この表式はr≠0ではδ→0の極限をとる事ができて、答えはゼロ、原点以外に湧き出しはないという結論になる。さてr=0ではどうなっているのか、単純にδが小さいと考えるとr=0では湧き出しは無限大という答えだ。実はこの表式はデルタ関数なのである。詳しい話は物理数学のデルタ関数の記事を読んで欲しい(補足2)。ここでは、これがデルタ関数だということを認めて先に進もう。

divV=δ/r2-δ=2πδ(r)

原点では発散があって、それはデルタ関数になっている。それ以外のところでは発散はゼロである、つまり湧き出しはない。そういうわけでこの流速ベクトルは原点から湧き出した水が二次元平面に広がっていく様子を表しているわけだ。広がっていくわけだからその流速はどんどん小さくなる、図を見ればベクトルの長さがrが大きくなるにしたがって小さくなっている事がわかる。河は源流では烈しく流れ、海に近づくにつれてゆったりと流れるという事だ。

今回の例では直感的にも分りやすい結果がでたのだ、ベクトル解析を知ると、原理的にはどんな複雑な流速ベクトルに対する発散でも計算できる。微分をするだけなのだから高校生でもできるだろう。こういうことの利点は一見目で見ただけでは何処に湧き出しがあるのが分らないような複雑な流速分布の時にも使えるということだ。直感も大事だが、計算できるという事は非常に強力な武器なのだ。

次回ちょと複雑な例をやることにしよう。と言っても今回の事が理解できる人には大した問題でもない。計算練習といったところだ。



(補足1)実は流速はx=-Lの辺上での位置yによっているのだが、これは最終的にL→0の極限をとる場合には無視できる。

(補足2)実は物理数学では通常の関数よりも広い意味の分布(distribution)というものを使う。関数は一点ごとに値を持つのだが、分布は一点ごとには発散しても良い。

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