2017-07

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≪ 障害者 ちぃちゃんの歌を聴いて ALL 3次元調和振動子 ≫

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レーザー冷却(ドップラー冷却)

物質を冷却することで様々な事が可能になる。身近には冷蔵庫、クーラーなど我々の生活に欠かせない道具がある。今回取り上げたレーザー冷却は、もっと低温にするための方法で、それはボーズ・アインシュタイン凝縮などの超低温実験で用いられる。具体的には原子などの希薄ガスを100μK=100*10-6Kのオーダーまで下げる方法として用いられる。このレーザー冷却の原理を簡単に(詳しい計算はなしで)理解するのがここでの目的である。

まず、基底状態にある原子のガスをレーザー冷却することを考えよう。原子ガスの持つ温度とは、原子が様々な方向へ飛び交う速度からくると思ってよい。よって原子ガスが飛び交わない状態にすることが温度を下げるということである。 アイディアはいたって簡単である。 つまりこうだ。

簡単のためにx軸方向だけを問題にする。 今速度+vでx軸の正の方向へ飛ぶ原子がある。この原子の速度を下げるためには、右からレーザーを照射して原子にぶつけると良い。 レーザーにぶつかった原子は跳ね返されたり、たまたま速度がゼロになったりと様々であるが、レーザーのエネルギーを調整すればぶつかった原子の速度がv≒0となるようにできるだろう。問題は原子ガスはランダムに運動しているため、その中から右方向へ飛ぶ原子(v>0)には右からレーザーをぶつけ、左方向に飛ぶ原子(v<0)には左からレーザーをぶつけるという選択的にレーザーを照射するマックス・ウェルの悪魔が必要である。



とまあ、普通なら不可能と思われることをやるわけだ。 近年のテクノロジーの進歩には驚かされるばかりであるが、上に述べたようなマックスウェルの悪魔を実現することができる。 それはドップラー・冷却と呼ばれる方法である。 原子ガス中の原子は基底状態にある。つまり原子の周りをまわる電子のエネルギー準位は基底状態であり、その原子は速度vをもって熱運動している状況である。この基底状態の原子であるが、十分なエネルギーさえあれば上の状態へ遷移したいと待っている。上へ遷移するためにはΔE以上のエネルギーが必要である。

ΔE = E1-E0≡hνatom    (この式はνaの定義)

レーザーの振動数νをエネルギーに換算すると Elaser=hνlaserであるが、このエネルギーをΔEより多少小さく設定しておく。振動数で書けば

νlaser  <  νatom


νlaserは実験室にいる人から見た場合のレーザーの振動数である。運動する原子からみれば振動数はドップラー・シフトを受けることになる。つまり、右方向へ運動する原子にとっては、右から来るレーザーの振動は高く見えるし、左から来るレーザーの振動数は低く見える。 さらに原子エネルギーの遷移振動数がそれらの間に来るように設定されている場合には

v > 0  の原子: νlaser from left < νatom  < νlaser from right
v < 0 の原子: νlaser from left > νatom > νlaser from right

となる。 νlaser from left、νlaser from rightは運動する原子からみたドップラー効果を受けた振動数でνlaser±δν。以下の議論にδνの具体的な値は関係しない。  こんな状況では速度v>0の原子は右からのレーザーのエネルギーを吸収して遷移するし、v<0の原子は左からくるレーザーを吸収して遷移する。 吸収して遷移するということは衝突することと同じである。つまりドップラー効果によって、原子自身が左右から照射されているレーザーを選択的吸収して、速度は減衰することになる。

つまり、運動している原子ガスに左右からレーザーを照射しておけば、自然と原子ガスは温度が下がるというわけだ。なんとも、うまい。 素晴らしいアイディアというものはわかってしまうと当たり前ということは良くある、これもその一例であろうか。 

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