2017-08

目次

≪ 対称テンソルの独立な成分の数 ALL 統計のお話1 ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スピンの合成1

クレプシュ・ゴルダン分解のもっとも簡単な例としてスピン1/2の系の合成について書く。多少数学めいた話題ではあるが、説明には物理的な描像を使った方が簡単なので、物理と数学の適当な混ぜ合わせのような話になってしまう。これを最初に学んだ頃は、全く理解不能な抽象的な数学の話題かと思われたが、理解できなくてもフォン・ノイマン発行の免罪符:「物理は物理学者には難しすぎる」があったので安心だった。その後、数冊の本を読み、また長い時間をかけて少しずつ理解が進んできたのだが、分かってしまうとフォン・ノイマンの免罪符をこんなところで使うのは勿体ない。一般論は面倒であっても、クレプシュ・ゴルダン分解の本質を理解するのは案外簡単なのである。纏めると、クレプシュ・ゴルダン分解とは「テンソル積の表現を群の既約表現へ分解する」ことである。 具体例を計算しながら説明していこう。



量子力学においてスピン1/2の状態はスピンが上向き|+>,そして下向き |->という二つの状態によって記述される。ここで上向きとか下向きとか言っているのは、「ある特定の方向をスピンの方向として選んだとき」にスピン軸に平行,反平行な方向のことである。ここでスピン軸としてz-軸(zをx3とも表記する)を取ることにする。よってスピン上向き、下向きの状態は

s3|±1/2> = ±1/2|±1/2>

というスピン演算子の固有状態である。ここでスピン演算子の添え字の3はz軸方向を意味する。ところで、スピン演算子にはs1, s2, s3があり、それらは次の交換関係を満足する。

[si,sj] = 1/2*i eijksk

但し同じ文字で書かれた添え字に関しては和をとるための記号Σk=1,2,3を省略するというアインシュタイン規約を使っている。またeijkは 完全反対称テンソルで e123=1で、その他は一回の添え字の入れ替えで符号を変える。例えばe213=-e123とか。紛らわしいが完全反対称テンソルの前にあるiは虚数単位である。このスピン演算子の交換関係が群論に繋がるわけだが(何故なら3つの演算子は交換関係に関して閉じているので、この代数の背後には群がある)、ここではそういったことは知らなくても問題ない。

ここで話を進めやすくするために粒子の持つスピンのイメージを与えておく。当然のことのように思われるかもしれないが(実は当然ではないのだが)、ここで扱っているスピン演算子に対応した粒子は「スピン1/2の粒子である」。どういう意味かというと、粒子に付随したスピン・ベクトル s=(s1, s2, s3)は長さが1/2のベクトルであるということだ。その長さ1/2のスピン・ベクトルが量子力学的に揺らいでいるために(スピン・ベクトルがグラグラとふらついているイメージを持って良いと思う)、古典的な描像とは相容れない性質を見せてくれる。スピン・ベクトルの長さに対応した演算子はs2s.sと定義される。すると、この長さの対応した演算子だって、いつも(1/2)^2の値を持つとは限らないわけだ。なぜなら、長さの2乗も量子力学的な演算子の固有値としてのみ値を持ち、その値が(1/2)^2になることは未だ証明されていない。ここで交換関係を計算してみると

[s^2, sK]
= sI[sI, sK] + [sI, sK] sI
= 1/2*i ( sI eIKJsJ + eIKJsJ sI )
= 1/2*i ( -eKIJ sIsJ + eKJ IsJsI ) = 0

となる。2行目に移る際に [AB,C]=ABC-CAB=ABC - ACB + ACB - CAB = A[B,C]+[A,C]Bの恒等式をつかった。3行目はスピン演算子の交換関係である。4行目は反対称テンソルの性質、そして最後はスピン演算子の添え字はアインシュタインの規約を使っているのでダミー・インデックスであることに注意する。この交換関係によって粒子のスピン・ベクトルは量子揺らぎのために不確定だとしてもその2乗は不変であることが結論される。但しその値はスピン・ベクトルの量子揺らぎのためにs2 = (1/2)^2=1/4 とはならずにs2 = (1/2)*(1/2+1)=3/4となるのである。ここでは具体例をみてそのことを確かめよう。と思ったがブログで行列をうまく表現できないのでこれは読者への宿題とする。

うーん、スピンの合成をしようと思っただけなのに、書き始めると相当に長い記事になりそう。疲れたので次回にしよう。





コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://letsphysics.blog17.fc2.com/tb.php/490-2ffbda0d

«  | HOME |  »

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

アトム 

アトム 

趣味   近所散策と物理

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。