2017-05

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≪ 物理の心? その6 ALL 宇宙論ノート その1 ≫

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宇宙論入門ノート 0

重力による時空の構造を調べようと思ったら一般相対性理論のお出ましである。一般相対性理論は非常に高度な数学を駆使した理論であるから、それを自由自在に操るのは専門家でもない限り不可能だろう。しかし多少の数学ができる人向けに、ある程度納得できる一般相対性理論を使った宇宙論を解説してゆこうと思う。 一般相対性理論はアインシュタインによる重力の理論である。時空間の曲がりは空間にあるエネルギーが決定するという内容がアインシュタイン方程式である。

アインシュタイン方程式: 時空の歪み = エネルギー分布

これは電磁場は電荷の分布できまるという電磁気学におけるMaxwellの方程式と非常に似ている。実際私のなかでは、時空の歪みと電磁場、エネルギーを電荷分布と対応させて理解しているし、この方程式を解くのも電磁気学と同じ方法を用いる。エネルギーは惑星の分布などから分るので、エネルギー分布をアインシュタイン方程式の右辺に代入し、方程式を解けば惑星の周りの時空歪みが分る。また宇宙の銀河分布から求めたエネルギーを右辺に代入すれば、もっと大きな領域での時空の歪みがわかる。大きなスケールでの時空歪みはつまりのところ宇宙全体の構造である。アインシュタイン方程式は宇宙を決定する方程式なのだ。

ところで時空の歪みと言っても、いったい何を計算すれば歪みが分るのだろうか? 答えは時空の計量を計算すればよいのだ。つまりアインシュタイン方程式は時空の計量を含む微分方程式なのだ。

アインシュタイン方程式: 計量で表した時空の歪み = エネルギー分布

このノートでは宇宙論で使われる特定の時空構造だけを考えて計量について説明したいと思う。つまり現実的応用だけに集中したい。一般的な計量や、その数学的な振る舞いに興味がある読者もいるだろうが、そういう事にふり回されると物理は始める前に人生が終ってしまう。実際ホーキングやペンローズといった有名な物理学者が一般相対性理論における数学的構造を追及しているのだが、今現在も発展中であり次々と新しい理解が得られている分野なのだ。その発展を追うのは私の能力をこえている。よってこのノートは一般相対性理論の宇宙論への応用という側面を議論する。素人が勉強してまとめただけのちゃちなノートだから、数学的にはいい加減な記述が多くなるだろう。もしも宇宙論や相対性理論の専門家がいたら間違いを指摘して欲しい。


さて時空の構造を決める計量というものについて説明したい。計量というのは時空のある点から別な点への距離を定義するものだ。簡単のため、先ずは3次元空間を考えてみよう。点 P=(x,y,z) から少しだけずれた位置 P+dr=(x+dx, y+dy, z+dz) への距離がどうなっているかを定義するのが計量だ。具体的に書くと

(P点から微小距離)2≡ds2=gijdxidxj

ここで gij が計量と呼ばれる量で、もしもgijijなら通常の平坦な空間での距離の定義を与える。このような平坦な空間を物理ではユックリド空間という。ユックリド空間は曲がってない、”普通の”空間である。一般には計量が位置(x, y, z)に依存する、つまりgij=gij(x)である。P=(x,y,z)から微小drだけの移動と Q=(x',y',z')から微小dr'だけ移動した場合では計量を評価する位置が異なるために、距離の定義は

P点からの微小距離の二乗: dsP2=gij (x, y, z) dxidxj

Q点からの微小距離の二乗: dsQ2=gij (x', y', z') dx'idx'j

という公式で与えられる。もっと具体的に、例えばP、Q点から座標点がx方向に1だけずれた点に移動したとすれば (Δx=1, Δx'=1;補足)

ΔsP2=g11(x,y,z) Δx2=g11(x,y,z)

ΔsQ2=g11(x',y',z') Δx'2=g11(x',y',z')

どちらも座標差でいうと Δx=Δx'=1 なのだが、実際の距離は異なる。座標の値 x=1 とか、座標値の差 Δx=1 は人が勝手につけた目盛りであって、あまり深い意味はない。例えば、あるところでは細かく座標点をつけ、別な場所では座標点を大きな刻みでつけるという事もあるわけである。よって座標点はある点を表す値には違いないがそれ以上の意味はないのである。またP点からx方向に1、y方向に1移動したときは(Δx=1, Δy=1)

ΔsP2=g11 Δx2+g12 Δx Δy +g21 Δy Δx + g22 Δy2
=g11 + g12 +g21 +g22

となるわけだ。もちろん計量はP点の座標値をもちいて評価したg(x,y,z)である。一般にx,y,zの全ての方向に移動した場合の微小距離の公式が最初に与えたものである。ここで一寸したことだが計量は二つの添え字の入れ替えで変わらない(対称テンソル)であることに注意しよう。


gij=gji


上の距離の定義を書き下してみると分る事だが、g12は dx1dx2の係数であり g21
dx2dx1の係数だ。しかし dx1dx2=dx2dx1なのだから、わざわざ二つも異なる係数を用意する必要はない。g12=g21として対称な場合を考えれば十分である。

今回のポイントは距離を測るためには座標点と計量の情報が必要だということだ。我々がよく用いる平面上に描いたメルカトル地球地図は便利である。xy座標を指定すれば場所が一つに決まる。例えばニューヨークを示したい時には、x、yを決めればそれは誰がみてもニューヨークである。これが地図上に座標系を張るということである。次に1/20,000の縮尺メルカトル図で二点間の距離を知りたいとする。メルカトル図に定規をあて、長さをはかり、2万倍をしても正確な距離は得られない。曲がった地球表面を平面に投射して描いたメルカトル図は距離を正しく反映できないのである。こういう場合には計量が与えれられなければならない。計量と座標値、このセットが現実の平面を記述するためには必要なのだ。

さて我々の3次元空間でもおなじ事がおこる。例えば、3次元空間の位置を指定するためにデカルト座標を張る。全ての場所には3つの数x、y、zが指定されており、位置は座標によって一意的に決まる。しかし、2点間の距離を図るとき、我々は計量を知らなければならない。まっすぐに張ったつもりのデカルト座標なのだから、計量はgijijであると主張する人がいるかもしれない。しかしまっすぐという言葉ほど曖昧ものは無い。実際我々が地球を丸いと認識するまで非常長い歴史があるのである。そして我々は地球儀の上に真っ直ぐな線は描けない事を知っている。それは地球表面が本質的に曲がった平面であることによる。
今や我々は3次元空間が本質的に曲がっているかもしれないと疑わなければならないのである。アインシュタインの理論によれば、物質やエネルギーがあると空間は歪む、だから真っ直ぐなつもりで張った座標であっても、距離を定義するためには計量が必要であるという。もっと正確に言えば、時空の計量はエネルギー分布に依存し、その関係はアインシュタイン方程式で記述されるということだ。もはや我々が単純に想像する世界は存在しない。時間や、空間は歪むし、それは我々の質量やエネルギーが決めるのだ。

時間や空間は絶対的なものであると思っていた、古き良き時代は去ってしまった。貴方が移動するとそれと供に、空間の歪みが伝搬する。時間さえも我々の存在によって変わってしまうのだ。単純にいうとこういうオカルト的にさえ聞こえる世界なのだ。

次回以降ゆっくりと話を進めて行こうと思う。まずは物質分布から計量を決める方法を調べたい。しかし一般に計量を計算するのは非常に複雑である。それは電磁気学で複雑な電荷分布から電場を求めるのが難しい事と似ている。しかし、球対称な電荷分布の場合には電場を求めるのは簡単である。同じように計量もなにか特別な状況では簡単に求められるのである。宇宙論で使われる計量はそういった特別な状況、対称性が良い場合の計量を用いるのだ。その話はを次回したいと思う。ただし、細かい導出は書くつもりは無い。私も殆んど忘れてしまった。仮定とその結果さえしっていれば大抵の場合困らないだろうし、導出が必要な読者は専門書を参考にするのが良い。そもそも、そういった読者は私の記事を見つける前にワインバーグのテキストなどを手にしているだろう。



【補足】dx=Δxと見なすは移動が微小のときだけ使える近似である。距離ds2の定義は無限に小さい微小量として定義されたものなので、長い移動距離を扱う時には積分を使う必要がある。


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