2017-11

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◆カテゴリー:本棚の一冊
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熱学思想の史的展開1 熱とエントロピー

熱学思想の史的展開1
熱学思想の史的展開1 熱とエントロピー
山本義隆 著 (ちくま学芸文庫)

熱力学に興味を持った人は、何れこの書を手に取るであろう・・・

そんな、台詞が似合う一冊だと思う。オリジナルは現代数学社
から出ていたものだが、筑摩書房から文庫本の改訂版として出
たものである。タイトルには改訂とは書かれていないが,著者
の前書きに加筆や訂正を加えてあると記されている。

この文庫本は三巻に分けられていて、1巻はガリレオの温度計
の発明から始まりアリストテレスの自然哲学へと進み、機械
論的な自然感を取り上げる。そしてボイル、フック,ニュート
ンと進み、熱の正体をめぐる18世紀の科学を眺める。そし
て18世紀末に熱力学への道を開いたのは、ブラックによる
『熱』と『温度』の区別であったことが述べられる。このこ
とによって、熱容量が定義され、定量的な科学としての熱学
の発展が可能になったことが語られる。熱量が正しく認識さ
れると、次第に『熱量保存則』,『熱物質論』と(誤った理解
へと)発展してゆくわけだが、それらは二巻で本格的に語ら
れる。

第一巻だけでも、かなりの参考文献がある。淡々と熱をめぐ
る歴史が述べられてゆくが、要所では数式を使った解説や歴
史的な意義を含めて、著者の考え方が述べられていて勉強に
なる。出来上がった熱力学について語るのではなく、それが
生み出されるまでの幾多の紆余曲折を省略することなく追っ
てゆくスタイルで書かれている。熱力学を一度勉強したあと
に、なぜ熱力学は(一見)こうもつかみ所がない体系となっ
たのか疑問に思い,その辺りをじっくりと勉強してみたい人
には打って付けの一冊だと思う。物理学史の専門家ではなく
物理学者が書いたことによって、熱力学に興味を持つ読者
の欲求も十分に満足させてくれる。

エントロピーのおはなし

エントロピーのおはなし
エントロピーのおはなし
―「役に立つ、役に立たない」はどうしてはかる?
青柳 忠克 著

エントロピーのお話を,数式をほとんど使わずに、解説した啓蒙書。
内容は「情報数学のはなし」 大村平著(日科技連出版社)と殆ど
同じである。「エントロピーのおはなし」の方は数式が少なく、「情報数学
のはなし」はもう少し数式を使って具体的にやっている。数式を少しは使っ
てほしいか、そうでないかで好みが別れる2冊だろう。どちらの楽しい本で、
かなりオススである。ただし、とても内容が似通っているので、どちらか一
方だけを読めば良いという気もする。

万物を駆動する四つの法則



「万物を駆動する四つの法則」 なにか深淵なことが書かれているの
だろうかと思って読んだら、熱力学の基本法則を解説しただけのもの
だった。内容は分かりやすいと言えば分かりやすいが、物足りないと
言えば物足りない。熱力学の基本法則は第0法則〜第3法則まである
が、それらが分かったからといって、実際に応用するにはもう少しテ
クニカルなことを知る必要がある。例えば偏微分とか、完全な熱力学
関数という概念とか。だからこの本を読んだだけでは、問題を解くと
いうことに関しては全くの無力であろう。つまり使えないわけだが、
使えることを目指していない人もいるだろう。エントロピーとか、エ
ネルギーとかいった概念は物理に興味がないとしても、環境問題や生
物のエネルギー代謝とか、様々なところで必要になるから。そのため
の教養として基本的なアイディアだけを知りたいという人には打って
付けの一冊かもしれない。

まとめると、熱力学の概観を得たいという人には、読みやすくて、基
本的な事項に絞って説明してあるので良い入門書。一度熱力学を勉強
したことのある人には、もう少し突っ込んだ話が知りたいという欲求
が出てくるかもしれない。

熱力学で理解する 化学反応のしくみ (ブルーバックス)

熱力学で理解する化学反応のしくみ

熱力学で理解する 化学反応のしくみ 平山令明著(ブルーバックス)

第1章,第二章でエネルギーについての説明から始まり、3章ではエントロピー
について説明する。この辺は、本格的に説明するとこれだけで1冊になる内容
だから軽く流すのかなと思ったら、なかなかじっくりと書かれている。ブルー
バックスの小さなサイズとはいえ、ここまでに100ページ費やしている。
分かりやすい例をもってきて説明してあって、フムフムという調子で読めた。
そのあとは、孤立系のエントロピー増大則を述べて、着目する部分系に関
する自由エネルギーを導入。分かりやすい。

基礎ができたら、次は様々な応用例で、エントロピーや自由エネルギー
の観点から化学反応がどのように進むのかを示してくれる。ブルーバックス
とはいえ、なかなか勉強になる。

「塩水を凍らせた時の氷は塩っぱいでしょうか?」

「水と油はなぜ混ざらない?」

「ゴムを暖めると伸びる,それとも縮む?」

などに答えを与えつつ進んでゆく。化学熱力学の基礎を学べる一冊だと思う。
最後の方は、化学平衡と反応速度の理論を扱う。ブルーバックスにしては、なかなか
高度な内容を含む本。レベルから考えて、高校生には少し難しすぎるかもしれないが、
化学熱力学を本格的に勉強するテキストの前に読んでおくと良いのではないかと思った。

暗号解読 サイモン・シン著



「暗号解読」サイモン・シン著(新潮社)

暗号の歴史から始まって、現代のインタネットテクノロジーを支える
公開鍵暗号までをスリリングに描いた作品。サイモン・シンの作品は
以前「フェルマーの最終定理」を読んだのが最初で、今回が2冊目。
最初から最後まで読者を飽きさせることがないテンポで進んでゆく。
物語としても面白いことは勿論だが、数学や物理に関する解説もとて
も分りやすい。一番気に入った話は、後半にある古代文字を読み解く
人々の物語である。物理では「ヤングの実験」で知られるトマス・
ヤングがエジプトの古代文字、ヒエログリフの解読の糸口をつかみ、
その後、シャンポリオンにして失われた文字の知識が完全に解明され
たのである。ヒエログリフは紀元前三千年頃に刻まれたものもある
らしい。一度失われた文字が数千年の時を経て、我々に語りかけて来
たのである。将に男の浪漫であろう!(男に限定する必要はないのだが)
この話は、その後、アリス・コーバーからマイケル・ヴェントリス
とジョン・チャドウィックの線文字Bの解明へとつながる。因にアリ
ス・コーバーは男の浪漫を持つ女性である。 

暗号の歴史、古代文字の解明の話に続いて,最後の方は現代の
インター社会で使われる公開鍵暗号の話題に入ってゆく。この話も
とてもドラマチックに描かれている。恐らく実際に起こったことよりも
エキサイティングに演出されているのだと思うが、それはサイモン・
シンが、徹底的に取材し、これらの事件に関わった全ての人々を愛情
をもって描いているからだろう。将に暗号をキーワードにした人間ド
ラマの超大作である。

良い本に出会えて良かった。暗号に関して全くの素人でも、十分に楽
しめる一冊ですよ。是非,読んで下さい。

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アトム 

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趣味   近所散策と物理

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