2017-11

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暗号解読 サイモン・シン著



「暗号解読」サイモン・シン著(新潮社)

暗号の歴史から始まって、現代のインタネットテクノロジーを支える
公開鍵暗号までをスリリングに描いた作品。サイモン・シンの作品は
以前「フェルマーの最終定理」を読んだのが最初で、今回が2冊目。
最初から最後まで読者を飽きさせることがないテンポで進んでゆく。
物語としても面白いことは勿論だが、数学や物理に関する解説もとて
も分りやすい。一番気に入った話は、後半にある古代文字を読み解く
人々の物語である。物理では「ヤングの実験」で知られるトマス・
ヤングがエジプトの古代文字、ヒエログリフの解読の糸口をつかみ、
その後、シャンポリオンにして失われた文字の知識が完全に解明され
たのである。ヒエログリフは紀元前三千年頃に刻まれたものもある
らしい。一度失われた文字が数千年の時を経て、我々に語りかけて来
たのである。将に男の浪漫であろう!(男に限定する必要はないのだが)
この話は、その後、アリス・コーバーからマイケル・ヴェントリス
とジョン・チャドウィックの線文字Bの解明へとつながる。因にアリ
ス・コーバーは男の浪漫を持つ女性である。 

暗号の歴史、古代文字の解明の話に続いて,最後の方は現代の
インター社会で使われる公開鍵暗号の話題に入ってゆく。この話も
とてもドラマチックに描かれている。恐らく実際に起こったことよりも
エキサイティングに演出されているのだと思うが、それはサイモン・
シンが、徹底的に取材し、これらの事件に関わった全ての人々を愛情
をもって描いているからだろう。将に暗号をキーワードにした人間ド
ラマの超大作である。

良い本に出会えて良かった。暗号に関して全くの素人でも、十分に楽
しめる一冊ですよ。是非,読んで下さい。

「情報数学のはなし」 大村平著(日科技連出版社)

jyouhousuugakunohanashi.jpeg

日科技連からでている<おはなしシリーズ>は、10冊以上あると思うが、どれも
とても読みやすい。今回紹介するのは「情報数学のはなし」で、情報エントロピー
の話から入って、冗長性,符号化と進んでゆく。途中0、1を使った2進数の計算
を説明しつつ,回路の話やエントロピーを使った偽コイン発見のクイズなど、楽し
みながら情報数学の世界に入ってゆける構成である。最後の方は、誤り検出と訂正、
暗号の解き方にふれている。

この本が非常に良いなあと思うのは、予備知識が殆ど要らないこと、そしてあまり
難しいことは書いていないということである。通勤の電車の中で読んで楽しめる程
度の<おはなし>となるように気を使っている。文章に著者の人柄が現れており、
なんだか講演会参加しているような感覚。丁寧で、とても誠実な話口調の老紳士が、
語りかけてくる、そんなイメージである。理系の話題に興味のある人は、このシリ
ーズから気になるトピックスを選んで読んでみると良い。お勧めである。

マックスウェルの悪魔 都築卓司著 (ブルーバックス)



ブルーバックスからでていた「マックスウェルの悪魔」都築卓司著
が新装版となって出ていた。マックスウェルの悪魔は熱力学第二法
則「エントロピー増大則」に関する話題として有名である。エネル
ギーを使うことなく気体分子の出し入れによって(自由)エネルギ
ーを生み出す架空の知能、それがマックスウェルの悪魔。マックス
ウェルの悪魔がいれば、エネルギー問題が即座に解決してしまうか
もしれない。コップに入った水が自然に熱くなって、美味しいお茶
が飲めるとか、道路を歩く人々の靴底から、摩擦熱を集めて「摩擦
熱発電」を実現するとか。そのた様々な利用が考えられる。そうい
ったマックスウェルの悪魔に関する話題を、とても分かりやすく解
説したのがこの本である。熱力学という、とても難しい内容を高校
生でも、読めるかな!?というレベルで纏めてある。サイエンスが
好きな人々全てにお勧めの1冊。


maxwellnoakumamanga.jpeg

「マックスウェルの悪魔」の表紙カバーによると都築卓司の書いた
著書は累計300万部以上も売れているらしい。科学の分野でこれ
だけ売れるのは本当すごい。一般の人にも分かりやすく、そしてと
ても興味深い話が多いということだろう。先日書店で、「マックス
ウェルの悪魔」のタイトルを見つけて開いてみたのが上の漫画。
都築卓司による同タイトルを漫画化したものらしい。といっても、
一部だけを漫画にしたものだが、860円もする。立ち読みして
みたが「えっ,終わり?」という感じで少々がっかり。こういう
企画自体はとても良いことだと思うけど,もう少し内容の濃い本を
出版してほしいなあ・・・

見える!使える!化学熱力学入門

見える使える化学熱力学

「見える!使える!化学熱力学入門」由井 宏治 著 (オーム社)

特徴は、ポイントが整理ボックスのような感じでまとめ
られていること。う〜ん、正直言ってこういう工夫はあ
まり好きじゃない。だって、そういった箇所を削れば本
が薄くなるじゃないですか。それに、受験参考書みたい
な感じがするし。

と、まあ、本の内容とは関係ない箇所ばかり取り上げて
も仕方がない。この本、内容はすごく丁寧で化学で使う
熱力学、とりわけエンタルピーとギブス自由エネルギー
について丁寧に解説している。章末に、最小限の演習
問題があって理解を助ける。もう一つの特徴は、一般論
は展開するが、応用としては理想気体だけに的を絞って
いる。これは、初めて勉強する人にはとても分りやすい
だろう。丁寧にかかれた一冊で、入門書としてお勧めで
きる。


物理学読本1 マックスウェルの魔 (戸田盛和著, 岩波書店)



世界的に有名な物理学者戸田盛和著の物理読本シリーズ1である。
戸田先生は統計力学や物性論で様々な賞を受賞しており、本も沢山
書いておられる。数年前に亡くなられたようである。ご冥福をお祈り
いたします。

さて、この物理読本シリーズ、4巻まであるようで、1.マックスウェルの魔
2.ミクロへ,さらにミクロへ 3.時間,空間,そして宇宙,そして4巻は
戸田先生の有名な仕事がある分野を含む4.ソリトン,カオス,フラクタル
となっている。このシリーズ、市の図書館でぱらぱらとめくったことがある
程度で読んだことがなかったが,最近エントロピーに凝っていて、マックス
ウェルの悪魔に関する書籍を幾つか買って読んでみた。その中の一冊として
購入したのが,戸田先生の「マックスウェルの魔」。

内容であるが、期待していた事とは異なり、熱力学の歴史を概観するという
ようなものであった。さすがに、物理の歴史にも詳しく、ガリレオやケプラ
ーなどの話も絡めて物理学全体の発展から、熱力学へと話が進んでくる。
話の流れもスムーズで、物理に関する説明も数式を殆ど使わずに直感的で分
かり易い。ただし、熱力学史というよりは、科学全体の発展の中で,熱力学
の誕生からエントロピーという概念に到達するまでの歴史を纏めている。
私としては、マックスウェルの悪魔に対する話を期待していたわけだが、
そしてタイトルもそれを期待させるものであったし。しかしながら,マック
スウェルの悪魔に関する話題もエントロピーに関する話題も、最後の方でち
ょっとふれられるだけで拍子抜けしてしまった。

だから、物理学の発展、特に熱力学周辺の歴史に興味の有る人にはお勧めだ
が,マックスウェルの悪魔やエントロピーなどについて突っ込んだ話を期待
して購入すると期待はずれになるだろう。対象とする読者としては、細かい
物理の内容まで理解するには多少知識が必要だが、物理史として読むなら高
校生くらいでも十分楽しめるものだと思う。



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アトム 

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趣味   近所散策と物理

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